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タンザニアからの手紙 No.10 我が家の亀

金山 麻美(かなやまあさみ)

 我が家の敷地は広い。2区画分、つまり2軒分の敷地なのだが、大家がお金がなかったので、家が1軒しか建てられず、店子の我々は2軒分の敷地をラッキーにも使わせてもらっているわけだ。

 庭で亀を飼っている。甲羅のたての長さが40cmくらいのけっこう大きな陸亀だ。正確には放し飼いしている。もう12、3年も前のことになると思うが、当時親しくしていた日本大使の公邸料理人が帰国する時に陸亀を3匹置いていったのだ。たしか3匹だったはずだが、それぞれ庭の勝手なところを這っているので、当時から3匹いっぺんに見かけることはなかったが、現在は1匹減ってどうも2匹しかいないようだ。以前、ゲートを空けた隙などに抜け出してしまい、近所の子どもが捕獲して持ってきてくれたことなどが何度かあったので、その1匹はいまころ、タンザニアのどこか他のところを旅しているのかもしれない。

 彼らが我が家にやってきた当初から餌を与えたことは一度もなかった。いつも庭を勝手に徘徊しながら雑草などを食べて気楽に生きてきたのだ。番犬を6匹飼っていて、昼は犬小屋の中、夜は庭に放すというふうにしているのだが、亀たちともんちゃくのあったことはない。

 現在いる2匹はメスとオスで、雨季の前になると交尾を始める。私が台所にいると、荒く息を吸きだすときに出るような「へーへー」という変な声がしてくることがある。オスの亀が交尾の時に発する声だ。メスは鳴かない。なぜかいつも台所の前の空き地でしている。交尾中に近寄ると、メスは逃げようとするのだが、オスは私などには構わず、しつこくメスを追いかける。この時期、台所付近に行くと毎日のように「声」が聞こえてくるので、たまには場所を変えんかい!と言ってやりたくなる。

 そのくせ、卵が無事かえったことは私の知る限りでは、今までで一度しかなかった。あのときは、小さな赤ちゃん亀を保護して家の中でかごに入れて世話をしていたのだが、私たちが旅行に行く前に庭に放したらそれきりになってしまった。カラスにやられてしまったのかもしれない…。

 今年に入ってとてもショックだったのは、我が家の庭師から、雨が降らず、雑草も乾いて少なくなってしまったため、亀が庭の有用な植物まで食べるようになったから、餌になるキャベツかなんかを買ってきてもらえないだろうか?と言われたことである。こんなことは今までなかった。放し飼いで餌もやらずに亀を飼っているということが密かな自慢だったのに。(どんな自慢だ?)それだけ今回の水不足、雨不足が深刻だったということだ。今もまだ発電所のダムの水不足による1日12時間以上におよぶ計画停電がほぼ毎日続いているし、水不足からの水の奪い合い(地面から水道管を掘り出し、それを切って水を取っていく…)による断水もしょっちゅうだった。

 幸い、3月の初めに一足早い大雨季に入ったようで、庭の植物も青々としてきたから、亀にキャベツを買ってくることはしていない。かれらは昨日も元気に交尾に精を出していた。


(2006年3月15日)

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