• 白川

タンザニアからの手紙 No.16列  に並ぶ

金山 麻美(かなやまあさみ)

📷 タンザニア人は、列に並んで順番を待つということをあまりしてこなかったと思う。バス停でバスを待っていてもてんでバラバラに広がっているだけで、目当てのバスが来るとバアッと群がるというようにして乗る。弱い者、小さい者は突き飛ばされ、遅れを取るという弱肉強食の世界。

 昨年は足蹴く通った水道局。水道料金の請求書に毎月ミスがあり、それも多額の超過請求となって送られてくるので、訂正するために毎回水道局のオフィスまで出向かなければならなかった。

 苦情受付係のおじさんの机の前には椅子があり、そこで文句を言うことになるのだが、ちょっと離れたところにも待っている人のために椅子が置いてある。が、数が少ないので座われない人も多い。何度行ってもよくわからないのだが、請求金額の苦情受付とメーターの読み間違いなどの苦情受付、その他にも幾人かスタッフがいて、机が並んでおり、誰が誰を待っているのか、すごくわかりにくい。

 一応、私の目当てのスタッフに近いところで待っている先客には、誰を待っているのか確認を取り、一応の順番の目安をつけることにしていた。そして、わたしより先に来た人を覚えていて、その人を追い越さないようには気をつけた。しかし、実際、誰が誰を待っているか分からない状態なので、順番を把握するのがとても難しい。それに後から来た人が順番を守ってくれるとは限らない。それでなくても結構待たされるのに、後から来た人に平然と先を越されるのは我慢できないので、待っている間中、目を光らせて、あの人が終わったら、次は私のはずだから、間髪入れずに前にいくのだ!!などと思っていなければならない。とても疲れる。

 何かの料金を払うために窓口に並ぶようなとき、列になることはある。しかし、平然と横入りしてくる人がいたり、後から来た人が窓口付近でぶらぶらしていて、ちょっと間が空いた隙に自分の用事をさっさとすましてしまったりということもある。でも誰も文句を言わない。わたしは順番を守らないのはとても嫌なので、文句を言ったことがあるが、そのときは他に待っているタンザニア人は誰も加勢してくれなかった。

 昨年の初頭だったか、タンザニア生活17年にして初めてタンザニア人が不正な横入りする人に対し注意するのを聞き、とても感動した覚えがある。水道料金を払うべく窓口に並んでいたときのことだった。5人くらいの列だったが、私の前の前くらいに横入りしてきたタンザニア人の若者(男)にたいし、私の前にいた少し若者より年上の勤労青年風タンザニア人が「順番に待っているのだから、一番後ろについてくれ」とはっきりと言うと、その若者は黙って後ろに回ったのだった。

📷 12月初旬に土地税というのを払いに行った。(自慢じゃないけど)マンゴやパイナップルやオレンジの植えてある畑をもっているので、その土地所有税を一年に一度払わなければいけない。大きな金額ではない。

 払いに来るようにとタンザニア税務署から催促の手紙が来た。納税を遅れると罰金が科せられるので、さっそく街中のオフィスに向かった。

 そうしたら同じ思いで来た人が多かったらしく、ビルの2階の窓口の前はたくさんの人でいっぱいだった。あまりいっぱいなので、出直そうかと思ったくらいだ。でも、よく見ると並んでいる。30人くらいの列。それも支払い窓口が3つくらいあるのに一列に並んでいる。なかなか画期的。列の後方に進んでいって、「誰が最後ですか」と聞くと、大柄のタンザニア人男性が「ここだよ」と教えてくれた。まっすぐに並ぶスペースがないので、列は蛇のようにのたくっているが、ちゃんと順番は把握できた。

 インド人風の人が2、3人、あとは黒人で女性はそのうち4分の1くらいの割合だった。見知らぬ人同士が「こりゃ2時間はかかるかなあ」「明日、出直してこようかなあ」「明日来たっておんなじさ」などとのんびりした口調のスワヒリ語で話しているうちに、思ったよりもスムーズに列は進んでいった。その間もどんどん後方に人が増えていき、場所が手狭になり、息苦しくなったためか、蛇は途中から切れて胴体の後ろ半分がフレッシュエアを少しでも吸える階段付近に移動した。でも、ちゃんといつも特定でない誰かが指揮をとってくれるので、後から来た人を最後尾につかせることができていた。

 一列で、先頭になった人が空いている窓口に行くという合理的なシステム。後ろで待っている人たちがもうすぐ空きそうな窓口を素早く察知して、先頭の人に「あの窓口に行くのだ!」などと指示を出す。

 あと5人くらいでわたしの番だというときに、杖をついた小柄なおじいちゃんが現れた。  わたしの前にいた人が彼に「わたしたちは順番を待っているのだよ」と声をかけた。 「いやあ、足が痛くてねえ。長い時間立っているのが辛いんだよ」という答えを聞いてからは誰も並んでくれとは言わなくなり、窓口のそばに立っていたおじいちゃんは、その窓口が空くと支払いを済ませて帰っていった。タンザニアらしいなと思ってちょっと嬉しかった。  これが日本だったらどうだろうと考えた。先に支払いをするのを認めただろうか。文句を言う人がいなかっただろうか。

 並ぶ人たち自身による、列の采配のおかげで、思ったよりも早く30分ほどで用事を終えることができた。やればできるのだ。大げさに言えば自治というやつ?ちょっと明るい未来を感じた気がして、嬉しい足取りで階段を下りた。


  (2007年1月1日)

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