タンザニアからの手紙 No.24 ヘアスタイル物語
金山 麻美(かなやまあさみ)
我が娘が髪を切った。このところ、ずっとストレートの長い髪だったのだが、気分転換したかったらしく、日本への一時帰国のときにこの絵のようなショートカットにしたのだ。
娘の通っている中学校は私立で、インド系タンザニア人の生徒が多い。インド系の女の子たちは、ほぼ全員、前髪も伸ばしたストレートのロングヘアである。小学校低学年くらいの年齢だと、ショートヘアのインド系の女の子も見かけたりするが、年頃になってくると押しなべて長い髪の毛となる。ムスリム、ヒンドゥー、クリスチャンと宗教はまちまちでも、ヘアスタイルは一緒。私服の時には、タンクトップを着たり、ローウエストのジーンズなど今時の格好をしたりもするのだが、髪型がみな一緒なので、ちょっと不思議な感じである。
学校では、娘のショートカットについての友達の評判はまちまちだったそうだ。中でも幼稚園からずっと一緒のA君(インド系男子)は、毎日のように「前髪が変だ」とか、「横の髪のはね具合がおかしい」とか感想を述べてくるらしい。
タンザニア女性の間では、薬で髪の毛を真っ直ぐにするというのがはやっている。ストレートパーマのようなものだろう。ヘアサロンでTsh3,000くらいかかるそうだ。
「どうして薬を使って延ばすの?」と訊いたら「そうしないと髪をとかしたり、セットしたりするのが大変だから」と答えた若いタンザニア女性がいたけど、それだけではないだろう。日本人の若者たちが髪を染めるように、タンザニアの女性たちも自分にはないものを求めているのだろう。
タンザニアの村に行くと子どもたちがわたしの真っ直ぐな髪の毛を触ったり、引っ張ったりすることがある。自転車で旅行をしている金髪の白人青年にある村で出くわしたことがある。短パンで自転車をこいでいた彼は、「子どもたちにすね毛まで引っ張られるから困ったよ」と笑顔で言っていた。
ちょっと前の話になるが、2003年の日韓サッカーワールドカップの時、日本代表の選手のほとんどが髪を染めていたので、気分が重くなった覚えがある。他の国の選手(白人が金髪に染めたりしていてもわからないのだけど)は、生まれながらの髪の色ででているのに、どうして日本人はそうできないのだろう。恥ずかしくもあった。ありのままの姿に自信が持てず、流行に流されやすい日本人の性質が世界に向けて発信されてしまったようで。
最近の日本では、その流行もすこしは落ち着いてきて、染めている人もいるよね、くらいになってきたようだからよかったけど。
タンザニア女性たちの無理やり薬で延ばされた髪の毛は痛々しい感じがするが、当人たちはおしゃれに胸をはっているのだろう。テレビに映し出される欧米の黒人女性歌手の多くはストレートや軽いウエーブの長い髪だ。 タンザニア女性の髪形だったら、昔からある編みこみヘアがすきなんだけどな。 (2007年9月1日)