• 白川

タンザニアからの手紙 No.25  SHEREHE-お祝い

金山 麻美(かなやまあさみ)

📷  真っ白なスーツを着た男の子二人が正面にしつらえた特製シートに照れたような晴れがましいような表情で座っていた。彼ら二人は本日、教会でKOMENYO(=Holy Communion:聖体拝受)を授かったのだ。

 聞くところによると彼ら二人はこの日のために何回も教会に通って教えを受け、そして、資格を得ることができたために、本日晴れの日になったというわけだそうだ。

 数ヶ月前にやはりKOMENYOを授かった娘を持つタンザニア人の知人が、教会からお祝いまでの記録ビデオを貸してくれた。  その教会ではその日にKOMENYOを授かる10歳前後の子どもたちが30名以上はいた。ちゃんと数えはしてないが。司祭の説話を聞いて、それから司祭の前に順番にならぶこと3回。額に何かを塗っていただいたり、頭に水をかけていただいたり、白いハンカチのようなものを受け取ったりと、そのたびに後見人のような女性と共にならびなおさなければならないので、とても時間がかかる。最後に白い聖職者のような衣装を着てもういちど司祭の前へ。これでやっと終わり。編集されたビデオで見ていても2時間以上はかかった。終わったあとの子どもたちはけっこう晴れがましい表情をしていたので、やはりうれしいのだろう。

📷 わたしと娘とスタッフの鈴木が招かれたお祝いは、職業訓練学校の中庭で、夕方の6時から始まった。親類縁者、近所の人たち、職場の仲間など60名以上が集まってなかなか壮観。わたしたち以外は皆、タンザニア人。女たちはこちらのカラフルなプリント布、キテンゲで仕立てた衣装を着こなしている人が多く、それがまた堂々とした体躯によく似合う。

 主賓二人のお父さんはそれぞれ我が家の夜警を仕事としている。その縁で招待されたんだけどね。ちゃんとご祝儀は前もって渡している。  後で聞いたらこの中庭の借用料はTsh50.000(=5,000円くらい)だそうだ。60人が座れて、ごちそうを置くスペースや、ダンスをするスペースも、ひな壇もしつらえられるのだから、十分な広さだ。けっこう安いと思う。といっても現在のタンザニア政府の決めた庭師やお手伝いさんなどの一月の最低賃金はTsh65,000なのだから、手放しで安いといえるわけでもないのだろう。  お父さんの1人に訊いたら、招待状を渡したうちの半分くらい(20組くらい?基本的に夫婦や家族単位に招待状を渡すので)からはご祝儀をもらい、それは一組Tsh10,000くらいだったと言っていた。

📷 KOMENYOを授かった子どもたちが皆、このようなパーティを開いてもらうのかと、近くに座っていたタンザニア人女性に尋ねると「わたしのときは家に帰って家族でごちそうを食べただけだったわ」という答えであったから、皆が皆ではないのだろう。

 先のビデオのお祝いは1人の女の子のためだけのものであり、さらに客の数が多く、ラッパ隊の演奏からはじまったりして、盛大なものであった。しかし、わたしの知る限り、その子の家もお母さんは外国人宅の料理人で、お父さんは雇われタクシーの運転手だから、お金持ちの部類とはいえないだろう。日本でだって子どもを主賓にお客を60人も70人も招いて飲めや踊れのパーティをなんて普通しないだろう、何で日ごろ「金がないない」といいながらこういう贅沢をするのだろう、なんて思ってしまった。

  わたしたちの招待されたお祝いに戻ろう。まず、会場に入り、適当にあいているところを見つけるか、または案内の兄ちゃんが勧めてくれたプラスチック製のいすに腰をかけると、飲み物のサービスがある。ビールかソーダか水を選ぶ。ほどよく冷えていた。

📷 プロの司会者がいて、場を盛り上げながら、進行していく。プロといってもどこかの学生だということだからセミプロか。小さくて太っている男性だったので、おじさんに見えたけどまだ20代の青年だそうだ。芸達者で、ダンスを呼びかけるときなど、腰をうまい具合にくねらせ、踊りながらしゃべるので、見ているだけでも楽しかった。

 関係者(両親とか親戚とか)を前に呼び出して紹介した後、タンザニアのお祝いパーティお決まりのコース(クリスチャンの?)で、お祝いのケーキカットがあった。主賓が関係者に一口大に切ったケーキを食べさせるのだ。わたしたちにも声がかかったので、娘が代表して食べた。

 合間、合間にタンザニアのヒットソングやなつかしのリンガラミュージックなどのダンスタイムが入る。

 そして待ちに待ったご馳走タイムとなる。会場の細長いテーブルの上に料理用バナナの煮込み、炊き込みご飯のピラウ、ヤギ肉の煮たものや、フライドチキン、お肉の入ったムチュージ(シチュー)、青菜の煮物、豆の煮物、キャベツの炒め物、などが並ぶ。ホテルのブッフェのようだ。

 そういえば前日の午後、父親二人と息子たちが我が家に来て、これから鶏を10羽ほど絞めるから、冷凍庫に保存させてくれといってきたのを思い出した。 鳥の羽をむしるためのお湯をガス台で沸かしたりしていたっけ。  並んだ料理も家族や親戚など関係者たちが前々から準備して心を込めて作ったご馳走たちなのだろう。

 父親たちがわたしたちに主賓の次にごちそうを取りに行け、というので、わざわざ村から出てきた主賓のおばあさんよりも先に行くのは憚られたが、あまりそこで遠慮の問答をしていても始まらないので、いただくことに。プラスチックの皿に料理を取り分けてくれるのはそれぞれの親戚の若者たちだ。ご飯など少なめに盛ってくれるように頼んだが、それでもちょっとしたご馳走の丘ができた。

📷 そのうちに料理を待つ長蛇の列ができてきた。司会の青年が 「ご馳走はたっぷり皆さんの分、あるのでご心配なく。ずっと立って並んでいると疲れちゃいますよ。大丈夫です」 とマイクで言うと、列の後ろの方の人たちは一時的に座るが、そのうちにまた列ができる、すると司会者が同じ言葉を繰り返す。  なんだかちょっと悲しい気分になった。やはりメインはご馳走なのだと思うと。こんなに着飾って堂々としている人たちも腹が減ってはなんとやら‥なのだ。今日の料理は本当においしいし、豪華だけれど、こんなご馳走をおなかいっぱい食べられる機会はおいそれとない人がけっこういるということなのだろう。

 主賓は子どもたちだけど、子どもたちも確かにうれしそうだけど、やはり、これはある意味、子どもたちをダシにつかった大人のための催し物なのだろうと気づいた。遠慮なくビールを飲み、ごちそうを腹いっぱい食べて、星空の下で思いっきり羽を伸ばして踊るための。日常の縮んだこころをおおきく広げるための。

 人数が多いので、最後の人がご馳走にありつく頃にはわたしたちはすっかり食べ終わってしまっていた。

 それからプレゼントの時間となる。主賓たちの前に置かれたテーブルに、お客たちが順番にちょっと踊りながら近づき、主賓たちに握手してお祝いを言い、プレゼントを置いていく。プレゼントがない人は小さなかごの中にお金を入れるのだ。司会者は、「お金を入れるふりをして、取っていったりしないでよ~」などと実演付きでしゃべり、笑いをとっていた。

📷 わたしと娘は日本製の三角定規とマーカーをキラキラ光るラッピングペーパーに包んでプレゼントした。他のひとは何を贈ったのだろう。けっこう大きい包みもあった。

 最近は踊ることもトンとなかったが、陽気に踊るおばさんたちに誘われて娘と二人、ダンスフロアへ。ノリノリのおばさんはわたしや娘に抱きついてきたり、キスしてきたりとすごい。主賓のお母さんたちとも微笑みあいながらダンス。女たちは元気がいい。主賓の男の子たちも恥ずかしそうに踊っている。踊っていると自然と笑顔になるから不思議。星空の下でゆったりとしたリズムにゆったりと体を任せる心地よさ。  このときばかりは、おためごかしではなく、心から、心の底から、この大地に生きる人たちすべてが幸せでありますようにと願えるのであった。

                                          (2007年11月1日)

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