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タンザニアからの手紙 No.3 頑張っているチビテ!とSauti za Busara 2005 (前編)

金山 麻美(かなやまあさみ)

    いよいよチビテ(CHIBITE)が始動しました。

ーMAWAZOー

 2月6日、7日の2日間に渡り、ダルエスサラームのMawazo Gallery で夕方7時半よりチビテ精鋭6名(Andorea・Lucus ・Tabu・ Pendo・ Chiku・ Msafiri)と飛び入りのMzee Dahaniによるパフォーマンスが行われた。 観客は在留外国人を中心とした24、5人。音楽NGOや大使館関係者など。 ゴザの上に座ってワインとオーナーのレイチェル手製のキッシュをつまみながらのくつろいだ雰囲気の中でのコンサートだった。

 会場の狭さを感じさせない大きな動きと伸びやかなリズム。7人全員でのオーケストラに始まり、イリンバ、ゼゼ、など10曲を10代3人、20代2人の若いパワーで元気一杯のパフォーマンスだった。 中でもゴゴ人の独特の女性が足の間に太鼓を挟んでたたきながら踊るムヘメは圧巻で、タブとチークの二人だけのパフォーマンスだったけれど、観ているほうの心臓も太鼓と一緒にビートされてしまうような大迫力。

とくにタブは、引き締まった体を汗で光らせながら晴れやかな笑顔で歌ってダイナミックに踊り、タブってこんなに美しかったっけ?と見ほれてしまう神々しさだった。円熟という言葉が頭に浮かんだ。彼女の場合、円熟期間は長そうだけど。(動きが速すぎてうまく写真が撮れず…)  両日とも拍手喝采の中で幕を閉じました。

 最終日の打ち上げにチビテのメンバーは今回の公演の仕掛け人でもあった弊社スタッフ山田智穂やレイチェルたちとバーに繰り出したそうだけど、そこでたまたまこちらの人気ラップグループのTIDに遭遇し、興奮して写真に一緒に収まり、その写真が10代乙女のチークやペンドの宝物になるなんてところは、どこの女の子も変わりませんな。

ーBUSARAー

<サウティ ザ ブサラとは?>  さてお次はザンジバルはストーンタウンのオールドフォートで昨年から開催され始めた音楽祭“Sauti za Busara”(知恵の声々)への出演。ザンジバルをベースにする文化NGOが主催するこの音楽祭は、スワヒリ音楽の豊かさと多様性の素晴らしさを多くの人に知ってもらうために始まったそうだ。今年は、2月10日から13日までの4日間。参加者の多くはザンジバル、ペンバ、タンザニア本土をはじめケニア、ウガンダ、ルワンダなど東アフリカのスワヒリ語圏ともいえる地域から。またエジプト、イエメンからも参加アーテイストがあった。  チビテは11日土曜日の午後7時から8時までの出演である。

<超早起きチビテ>

  さて、チビテ一行16名(+幼児2人)は、11日当日の朝、ダルエスサラーム港7時半発のザンジバル行きフェリーに乗るために、アンドレアの掛け声で夜中の2時!に起床し、4時に車でバガモヨを出発し、5時には港へ到着していたそうな。ご苦労さん。  私も同じ船に乗ったのでいろいろ聞いてみた。 「何でそんなに早起きしたの?」「アンドレアがとにかく遅れちゃいけないというから」とタブ。心がけは確かに偉いが…。

 朝ご飯も食べていないというけれど、(2時から4時までの間、何をしていたのだ?)フェリーに乗るのが初めての人たちも多い中、出発直前に食べるのも怖いので皆さん、空腹のまま自重していた。故ムゼーザウォセの夫人のひとり、ママペンドも最初はメンバーに入っていたが、船に乗るのが怖いから参加をやめたとか。16人中5人は始めてフェリー(高速船)に乗る人たちだった。  エステリとシワズーリのヤンママ2人は、それぞれ赤ん坊と2歳くらいの幼児を連れてきていた。「公演の最中はどうするつもりなの?」と尋ねると、2人揃って「そのときには絶対寝ているから大丈夫!」というお答え。

<他国からもミュージッシャンが…>

 100人は乗れるシーエキスプレスの2等席は満席だった。なんとなく雰囲気が華やかと感じていたら、他にもブサラ音楽祭に向かうミュージッシャンの団体が二組ほど乗っているのだった。そのうちの一組はルワンダからきた若い男女数人のグループINEMA*。10代後半と思える女の子たちが美人ぞろいでおしゃれで垢抜けていてびっくり。波が高くてよく揺れる船に参ったらしく、船酔いして甲板に出てグッタリしていたけれど。そんな時でもメンバーの男の子がべったりくっついて後ろから抱きしめてあげていたりして、そんなとこもタンザニアとちーがーうと思ってしまった。でっかい太鼓などを持ち込んでいたので、彼らのパフォーマンスもぜひ見たかったけれど、翌日の夜の公演だったので、見られなかった…。すごく元気一杯で好評だったそうだ。

 ザンジバルの港では、トランペットやシンバルなどの6人のおじさん楽団が賑やかに演奏して、音楽家たちの到着を歓迎していた。なかなか粋なはからい。踊りだすミュージシャンたちも。その後、演奏しつづけるおじさん楽団を荷台に載せたピックアップを先頭にミュージッシャンたちのマイクロバス3台が会場のオールドフォートまで、お祭り気分を盛り上げながら走ってゆくのだった。

<サウティ ザ ブサラ 2005>

 その日のブサラ音楽祭は午後4時から始まった。オールドフォートの奥にあるマンボクラブグラウンドには、大きなステージが設置され、Tシャツなど音楽祭グッズを扱っている事務局の店や、飲み物や食べ物の屋台も出ていてちょっとしたお祭り気分。入場料は、芝生のグラウンドに座るのだったら無料。これもなかなか粋なはからい。椅子席だと5,000シリングするそうだが、椅子は日なたに置かれていたので、昼間は座っている人はほとんどいなかった。

 4時からはザンジバルの若者によるアクロバットとスワヒリ語のラップグループが2組、音楽学校の生徒たちによるザンジバルの伝統音楽(Kidumbak)の演奏と歌と続いた。  観客は徐々に増えつづけ、6時ころには200人を越していただろうか。老若男女、人種もまちまちで、真っ黒いブイブイに身を包んだ女性や、ムスリム帽をかぶった男性、はしゃぎまくっている子供たち、タンクトップ(ザンジバルではあまりお勧めしない格好だけど)の白人女性などいろんな人が交じり合っているところがまたいいよね。

<ザンジバルの至宝 ビ・キドゥデ>

 さて、いよいよチビテ…ではなく、その前に本日のメインイベントのもう一つ、Bi Kidude の登場である。彼女は何と御歳93歳(たぶん)のミュージッシャンである。昨年のブサラでも公演し、ザンジバル市内でも毎週コンサートが行われていて、海外公演にも何度も行っているというザンジバルいや、東アフリカの顔といってもいいくらいの音楽家なのだそうだ。1920年代から音楽活動を始め、あの宮廷音楽だったタアラブを誰にでも楽しめる音楽に変えた今はもう歴史上の人物と言ってもいいザンジバルの歌姫Siti bint Saad* にたくさんの歌を教わったというから驚きだ。実は私は今まで彼女のことを知らなかったのだが…。

 ビ・キドゥデは聴衆の海を割るようにして登場した。細くて小柄だが、真っ直ぐ伸びた背筋、凛とした表情。司会者の紹介とともに現れ、人々の波の中を進んでいくカンガに身を包んだ彼女の姿は、偉大な音楽家のようにも、気さくなおばあさんのようにも見える。だが、周囲に特別なパワーを振りまいていたのは確かだ。彼女と目が会ったらどきんとして背筋が伸びた。

 ステージに上がると細長い太鼓を股の間にはさみ、カンガで腰に縛り、固定する。これがいつものスタイルらしい。太鼓の底が地面についているとはいえ、重そうだ。と、力強い太鼓の音とともに体全体から振り絞るような声が会場中に響く。滴る汗。圧倒される。聞き惚れていると、そのうち、ゆったりとした衣装を着たふくよかな女たちが4人ほどあらわれる。腰をゆらし、ビ・キドゥデにあわせて歌いながら、ビ・キドゥデの周りをゆったりとまわる。踊っている女たちのうきうきした感じがこちらにも伝わってきて、「ああ女たちの祭りなんだ。これは」と思った。舞台の上で観るより、同じ地べたで見たい、聴きたい。できれば一緒に踊りたいなあ、と思った。ディーバ=ビ・キドゥデの歌に酔いしれながら。

 さて、いよいよチビテの登場!といきたいところですが、長くなってしまったので、続きは3月15日号でアップします。お待ちくだされ。

* INEMA…ルワンダの首都キガリをベースに20年前から活動しているカルチャーグループ。主に孤児や社会の周辺に押しやられた子供たちに向けて活動中。とくに1994年のルワンダ虐殺のあとは、子供や若者を元気づけ、幸せな気持ちにするための活動が必要だと感じ、そのためのコンサートも開いている。ダンスや太鼓は現代的でもあるが、根っこはルワンダの伝統音楽である。ヨーロッパでも公演した。(ブサラ音楽祭2005パンフレットより)

* Siti binti Saad(1880~1950) ザンジバルに生まれる。奴隷の身分から、その歌のうまさで引き立てられ、タアラブバンドの歌姫となる。それまで宮廷音楽で、男性だけで、アラビア語で歌われていたタアラブを、スワヒリ語で歌い、庶民も楽しめる音楽とした。初めての東アフリカでの商業用のレコーディングも彼女の歌である。彼女の作った歌詞には政治的なメッセージが含まれることもあった。今もタンザニアの特に女性たちのシンボルとなっている。

(2005年3月1日)

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