タンザニアからの手紙 No.31 中学生たちの主張!
金山 麻美(かなやまあさみ)
デモに参加した中学生たちと警官:8/2付けDaily Newsより8月1日金曜日の朝、用事があってダルエスサラームはウパンガ地区にでかけた。この地区には学校がたくさん集まっている場所がある。UN道路を車で走っていると道路沿いの公立中学校の塀の外に中学生と思しき制服を着た生徒たちがたくさん立っているのが見えた。塀の中を覗き込んでいるものも‥。一緒にいた息子が「ストライキでもしてるんじゃない?」と。その後、消防署を曲がって娘の通う私立学校に向かう道すがら、今度はプラカードらしきものを手にした中学生くらいの若者たちが走っていくのとすれ違った。みな、白いシャツを着ているが、ズボンやスカートの色はまちまちであった。いろいろな中学校の生徒たちが集まっているようだ。10人くらいの塊が行くと、少ししてからまた5人くらいの集団が通り過ぎていくというように、かなりの数の生徒たちを見た。プラカードらしきものは、何かで包まれているので、なんて書いてあるかわからない。走っていく彼らの表情は、晴れ晴れとしていて、これからお祭りにでも行くんじゃないの?っていうような感じであった。
ガソリン代高騰のあおりで、バス代が8月1日から値上げになるのは、知っていた。現在ガソリン1リットルTsh1,700である。($1=Tsh1,150:8/10現在)今まで10km以下の距離のバス代はTsh250だったのが、8月1日からTsh300になった。それに伴って学生料金もTsh50からTsh100になったのであった。
その後、カーラジオを聞いていると、あの中学生たちは、バス代値上げ反対のデモをしているということだった。ラジオのリポーターが、デモをしている生徒にインタビューをしようとしたところ、みな、遠くへ行ってしまって、なかなかつかまらないというシーンがあった。やっと捉まえた生徒が正直に自分の名前や学校を言っているようなので、大丈夫だろうかと心配になっりもした。聴いたところによると、デモに参加した生徒たちは、警官に水をかけられたりしていたということだったから。あんなに生き生きとした表情をしていた若者たちだっただけに気になった。
タンザニアでは小学校7年間は義務教育だが、中学校は違う。試験を受けてパスしたものだけが入学できる。近年、中学校進学試験にパスする生徒はだんだん増えて60パーセントを越していると聞いている。政府も中学校増設を呼びかけているし、ルカニ村便りにもあるように村人が寄付金を集めたり、自助努力をしながら中学校建設をしているところもある。
ダラダラと呼ばれるバスと中学生たち 公立中学校の年間の授業料はTsh20,000で、7月28日付のDaily Newsにも書いてあるが、政府はTsh40,000から半額のTsh20,000に授業料を値下げしたそうだ。それなのにバス代を値上げするのは矛盾しているし、家計の苦しい家では子供が学校に通えなくなるというのが、中学生たちの主張だ。公立中学の入学試験に合格した子どもたちは、自分たちで学校を選べず、振り分けられた学校に通うことになる。必然的にバスで通わなければいけない子供が多くなる。知り合いの中学生は朝7時に学校に着くために、まだ暗い5時半に家を出て、バスを二つ乗り継いで学校に行くそうだ。値上がりしても学生料金は一般料金の3分の1のため、バス停で学生が何人か待っていても、学生を二人ほど乗せたら、「あとの学生はこのバスには乗せない」とバスのコンダクター(車掌)に言われ、乗車拒否にあうこともよくあるらしい。学校にたどり着くまでがたいへんなのだ。
数は少ないが全寮制の公立中学もあり、食事もついての年間の授業料がTsh70,000だそうだ。往復の時間とバス代が節約になるため、全寮制の中学に行きたがる子供(と親)も多いと聞いている。たしかにバス代のことを考えると全寮制のほうが安くつきそうだ。しかし、学校によっては朝食は紅茶だけだったり、食費が足りなくなると学校を早く閉めて子供を家に帰すなどということもあるらしい。また、いい先生に当たればいいが、そうでないと、全寮制だと塾に通えないという問題もでてくるそうだ。(進級、進学するためには、-塾(トウイションと呼ばれる私塾。教師がアルバイトしていることが多い-に通わないときびしい、ということらしい)
ともあれ、中学生たちは、「バス代値上げに反対する」という主張を掲げて果敢にデモを行った。黙って耐えるだけでは物事は動かないだろう。(親たちはどうして黙っているのだ?という疑問はあるけど)でも、それに対する当局からの返事はまだない。
(2008年8月15日)