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タンザニアからの手紙 No.4 頑張っているチビテ!とSauti za Busara 2005 (後編)

金山 麻美(かなやまあさみ)

 チビテの出番は、夜の7時から。ほどよく暗くなり始め、照明がつき、雰囲気が盛り上がってくるころ。観客もかなり増えてきた。300人以上いるだろうか?

 チビテのメンバーたちは出番の前から太鼓の張りをよくするため、火で暖めたり、打ち合わせをしたり、準備に余念はない…と思いきや…。  やっぱりエステリとシワズーリの連れて来たチビたちは、寝ないじゃないか!!幸か不幸かメンバーのうちの1人まだ15歳の少年バハティは、初めてのフェリーでめちゃくちゃ船酔いしてしまい、その後もお腹が痛いと言ってパフォーマンスできない状態だったので、(それもちょっと情けないが)シワズーリの娘ワンデーマ(2歳くらい)は、彼が見ることに。エステリは、それまでおぶっていた娘のルーシーを、案の定、近くにいた私に「ほいっ」とばかりに渡してきた。まあ、そのころには、他に面倒が見る人がいなさそうだから、それも仕方ないなと思い始めていたのだったが。でも、パフォーマンスの写真が撮りたかったので、エステリがしていたのと同じようにカンガで背中にくくりつけてもらった。これでかぶりつきで写真も撮りにいけるさ。背中がやけに重いけど。  でも、バハティや

私がいなかったらシワズーリとエステリは子供たちをどうするつもりだったんだろう、とふと思ったけど、ここはタンザニア。誰かが困っていれば、誰かが手を差し伸べてくれる。子供好きの大人も多い。なんとかなってしまうのだ。私は、こういういい加減さがとっても好き。

 さていよいよ本番!16人ならぬ15人編成のオーケストラでスタート。9人が、弦楽器のゼゼやンドノ、イリンバ(親指ピアノ)笛、木琴、太鼓などをそれぞれ受け持ち、6人の女性たちがその周りで踊る。もちろん歌もあり。  男性の高音や女性の低音の混じり合った不思議で懐かしいような歌声や、軽快でいながら余韻の残る楽器たちの音が、軽やかにからみ合って夜空に広がっていく。しなやかでダイナミックな動きの踊り手たちの肌はなまめかしくライトに照らし出される。夜に舞う光。 ほぼ芝生をうめ尽くしている観客たちの目も耳も舞台に釘付けになっているようだ。祭りのクライマックスが始まったのだ。

 そしてルーカスのゼゼとアンドレアの歌声のコンビネーション。郷愁を誘うゼゼの響き。ルーカスの声は以前よりも張りが出てきて、高音もよく伸びる。アンドレアの甘い歌声と茶目っ気のあるダンスが場面を盛りたてる。  ムヘメ!足と足の間に太鼓を挟んでたたきながら歌い踊るゴゴ人女性独特のムヘメ。タブとエステリとメリーとンデークワの4人。なかなか大変な体勢のはずなのに、そんなことは微塵とも感じさせない。踊り好きな女たちの本領発揮という感じ。4人とも大柄ではないのに、舞台が狭く感じられる。タブが笛を吹きながら音頭をとり、周りを他のメンバーが楽器や歌で盛りたてる。

 おっとワンデーマが泣き出した。バハティが困って舞台の袖に連れて行くと、出番の合間にシワズーリがやってきてあやしている。エステリの娘ルーシーは私の背中でおとなしくしている、半分眠っている模様。なんていい子。起きている時も、舞台のすぐ近くで写真を撮っている私が、「ほら、ママが踊っているよ」なんて背中のルーシーに話し掛けると、大きな瞳をまん丸にしておとなしく見ている。

 その後も、音楽が鳴り出すと体が自然に動きだしてしまうペンドの迫力のあるダンスや、タブの夜空に響き渡る歌声つきダンスなど、見ているほうの興奮が収まらない舞台が続いた。

 チビテの最後は、ルーカスとアンドレアによるイリンバのアンサンブル。 大型イリンバのぐわあん、ぐわあんという心地よいノイズに体が酔っぱらう。2人の歌声はカラフルな織物のように絡み合う。足につけた鈴がビートを刻む。私も自然に揺れてくる。会場全体が音のベールに包まれた。

  午後8時。チビテの舞台が終わった。今宵のブサラはまだ続くけれど、帰途につく観客も結構いた。舞台の上からは、ザンジバルのムゼー(年配の紳士)たちのバンドによるロマンチックなタアラブが聴こえてくる。が、目の前にいるのは、お腹をすかしたチビテ軍団と、まだまだ寝ないチビ2人。観客に夢を見させた一行は、フォロダニ公園の屋台のムシカキ(焼き鳥の牛肉版)などで、すきっ腹を満たすことになるのだろう。

頑張っているチビテ!とSauti za Busara 2005 (前編)へ

(2005年3月15日)

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