タンザニアからの手紙 No.42 マコンデ彫刻を習う
金山 麻美(かなやまあさみ)
黒光りするマコンデ彫刻―モザンビークとタンザニアの国境地帯にまたがって分布するマコンデ人たちが黒檀に彫ったものがそう呼ばれている。そのマコンデ彫刻をプロの彫刻家に教わるというのが、この企画である。それもホームステイしながら…。
先生は、マティアス・ナンポカ。HPの「タンザニアの芸術」のページでも取り上げている彫刻家エバリスト・ナンポカの息子だ。現在はダルエスサラーム郊外の自宅で彫刻を彫っている。
今回の生徒は兵庫県尼崎市にある旅行会社マイチケットの岩井さん。マティアスの元には今迄にも何人かの日本の美大生などが、教わりに来たことはあった。しかし、彫刻は図工の授業だけという人を教えるのは、初めてのことではないんだろうか。しかも、マティアス家にホームステイしながら習うのだけど、岩井さんはスケジュールの都合で、1泊しかできないのだ。 果たして2日間で、どこまでできるのか。
初日、岩井さんと一緒にマティアス家を訪問する。一通りの挨拶が終わると、師匠マティアスは、「時間がないから、はやく彫刻を始めよう」と、早速工房に向かった。工房は、タマリンドの木陰にある。木漏れ日がちらちらしていて、心地よい風も吹いて気持ちのいい空間だ。
そこには、小さいけれど、れっきとした黒檀が鎮座ましましていた。長さ30cmくらいだろう。これを彫るのはプレッシャーでは??前向きな岩井さんは、「師匠のようなシェタニ(精霊)が彫りたい」と言う。
マティアス師匠は黒檀の木を手に取り、ゆっくりとまわしながらじっと見つめた。師匠が言うには、木とこうして向き合ったときに、その木が形作るはずの彫刻の姿が見えてくるそうだ。
そして、師匠はてきぱきと岩井さんに座る位置や、黒檀の抑え方などを指示するのであった。スワヒリ語と身振りで。岩井さんはスワヒリ語は挨拶程度だけれど、あまりコミュニケーションに支障はなさそう。
さあ、いよいよ彫り始める。木目の見方や彫り方、道具の使い方などは、師匠マティアスが丁寧に示してくれる。緊張する第一刀。なかなか堅そうだ。 子どもたちも集まってきてて、覗き込んだり、おしゃべりして遊んでたり…。汗をかく岩井さんのまわりはのどかである。でも、岩井さんも楽しそう。
わたしはその後すぐに「がんばってねえ~」と言いつつマティアス家を後にした。岩井さんも2日で仕上げるのは、到底無理だろうから、日本に戻ってから仕上げができるように教わると言っていた。けど、どこまでできるか、楽しみである。
翌日の夕方、岩井さんが帰ってきた。彫刻を見てびっくり!!シェタニの形になってるではないか。すごい。
あのあと、昼食(ウガリと牛肉のムチュージ)をはさんで、4時間くらいぶっ通しで、彫り続けたそうな。翌日もやはり4時間は、彫ったねと言っていた。「腕が痛いです…」と岩井さん。頑張りましたねっ。
あとは、目の細かいヤスリをかけて磨けば、怪しく光るシェタニとなるのだろう。
今回は、1泊2日と短かったけれど、3、4泊くらいあったらどうだろうか。1日2時間くらい彫刻を習って、あとは子どもたちと遊んだり、近所を散歩したり、家事を手伝ったり…というのんびりタンザニア郊外ステイを楽しむのはいかがだろう。マイチケット社と協力して「マティアス・ナンポカに習う~マコンデ彫刻ツアー~」というのを企画している。小人数でじっくりの旅だ。彫刻の素養のある方もない方もカリブ!(=いらっしゃい)
☆このお話はわたしのブログ「タンザニア徒然草」にアップしたものを再構成したものです☆
(2011年1月15日)