• 白川

タンザニアからの手紙 No.55 古新聞を売る

金山 麻美(かなやま あさみ)

 万年未舗装道路だった家の周りの道路が舗装されてしまった。家の中にいても朝早くから夜遅くまでびゅんびゅん飛ばす車の音が響いてきて、高速道路のそばに住んでいるような気分になる。先日は家のすぐ前で車同士の衝突事故が起きてたし(怪我人もなく大きな事故ではなくホッ)車で家を出たとたんに渋滞にはまってしまうこともある。

📷  でも、変わってしまったこの近辺にも「ンジェゲレ、ンジェゲレ(グリンピースはいらんかね~)」などと声を響かせながら徒歩でやってくる行商人がまだいるのは、なんだか嬉しい。

   たまった古新聞、それもDaily NewsとThe CitizenとMwananchi という3紙の1年分。夫が資料に使いたいから、1年間は取っておいてほしいというので、けっこうな量がたまるのだ。どうするかというと、もちろん売るのである。売る分をまとめてからは、家にいるときは耳をすますようにしていた。 「マガゼッティー!マガゼッティー!(新聞~!新聞~)」と大声を出す古新聞買い取り屋が 来たら呼びとめるのだ。

 その声が聞こえて来たので、行きすぎてしまう前にと、急いで家の外に出て「カカ!(お兄さん)」と叫んだ。だぶだぶのズボンをはいた40代後半くらいの丸っこいおじさん(丸さん)だったけど、一応兄さんと。束ねられてない新聞紙をぐちゃって感じで抱えてた。前回売った人とは違う、はじめての古新聞屋さんだ。

 丸さんだけかと思ったら、同年輩のひょろ高いおじさん(ひょろさん)もいて、二人で古新聞を見にやって来た。我が家の庭師Hさんにも加勢してもらって、こちらのウジャンジャ(※1)レベルを高める。重さはさっと見積もっても60kg以上はありそう。昨年の実績では、1㎏300から400シリングという相場だった。

📷 いくらで買うかと尋ねたら、丸さんが「13,000シリングだな」という。間をおかずにHさんが「そりゃないでしょう。30,000シリングはもらわないと」とたたみかける。内心、「ちょっとふっかけすぎ」と思ったけど、うんうんとうなづきながら、計算機をたたくふりをする。ひょろさんが「じゃあ、15,000でどうだ」と控えめに上げてきた。攻防戦が繰り広げられ、向こうの言い値が20,000シリングまで上がる。Hさんは「まだまだ」って雰囲気を醸し出してたけど、「ちょっと古めの新聞もあるし、一部埃かぶってたりもするから、まあしょうがないか」ってわたしが折れる形で収束。いい落としどころじゃないでしょうか。

 丸さんとひょろさんがポケットをゴソゴソやって取り出したのは、よれよれの1,000シリング札が8枚だけ。それしか手持ちがないと言う。それをひとまず受け取る。 「1時間以内に残りのお金を持ってまた来るよ。元々持ってた古新聞は置いてくから」 と言い終わるか終わらないかのうちに、ふたりはそこにあった大きな古新聞の束をごそっと抱えて「これは持ってくね、すぐ戻ってくるよ~」と言いながら去っていってしまった。彼らが持っていったのは全体量の約半分。彼らが戻ってこなかったら、8,000シリングで半量を売ったことになってしまい、こちらのウジャンジャ負けに…。それはくやしいなあ。  Hさんは「自分たちの持ってた古新聞を置いてったし、携帯番号も一応聞いたし、戻ってくるよ」と涼しい顔している。わたしが疑り深いのか。。。。

 約1時間後、二人はちゃんと12,000シリングきっかり持ってもどってきた。ひょろさんは大きな束を抱きかかえるように持って、丸さんは手に持つだけでなく、頭にも新聞の束を乗せて「またよろしくね~」と言って笑顔で去っていったのだった。家の中も気分もすっきりして気持ちよく昼寝ができそうな午後となり。。。

  ※1ウジャンジャ(ujanja)は、悪知恵というような意味のスワヒリ語だけれど、それを賢く使うたくましさ、というプラスの意味が含まれている気がする。 『ウジャンジャは「狡猾さ」や「賢さ」を意味する言葉であり、狡知、策略的な実践知である』…『都市を生き抜くための狡知』小川さやか著 世界思想社 より 

※タンザニアでは、古新聞は再生紙として使われるのではなく、露天、商店などに売りに出され、販売物の包み紙や紙袋として使われてるそうだ。

                                                         (2014年11月1日)

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