
白川
タンザニアからの手紙 No.61 CHIBITEに酔う
金山 麻美(かなやま あさみ)
毎年8月にやってくるオルタナティブツアー(AT)の目玉のひとつは、民族音楽のコンサートだ。大地を裸足で踏みしめながら踊り、太鼓を響かせ、鈴を鳴らし、楽器を歌うように奏でるようすは壮観だ。
その音楽集団はCHIBITEという。(CHIBITEについてはこちらをご覧ください) ATでは、総勢40人以上はいるであろうCHIBITEの演奏を彼らの住んでいるバガモヨまで出向いて、1時間にわたって堪能するのだ。 今回、久しぶりにATの参加者の方たちに混じってCHIBITEのコンサートへ行ってきた。
土曜日の午前10時半開始予定なのだけど、10時15分くらいになってもまだ悠々チャイを飲んでいるメンバーもいたりして。。 CHIBITEの大黒柱の一人で、わたしのリンバ(親指ピアノ)の師匠、タブ・ザウォセは、しっかり衣装は調えていたけれど、「ちょっと微熱があって今日は踊れないから太鼓を叩くわ」と言う。タンザニアで女性で太鼓を叩く人は少ないらしいが、彼女は太鼓もリンバもゼゼ(弦楽器)も踊りも歌もこなすマルチ・プレイヤーだ。タンザニアの人間国宝といわれた民族音楽家の父、フクウェ・ザウォセの血を濃くひいているのだろう。
CHIBITEのメンバーのほとんどは、フクウェの妻や子どもたち、孫たち、親戚たちといったザウォセ一族なのだ。 幼少期から父や周りの大人たちが歌ったり踊ったり楽器を奏でたりしてるから、音楽に囲まれて育つことになる。そのそばで小さな子どもがリズムに合わせて踊ってたりしているのを見かける。
<ちょっとピンボケだけど踊るちいちゃな子>
リンバやゼゼなどの楽器も手作りする。それらは彼ら、ゴゴ人の伝統楽器だが、ほかの民族の踊りや太鼓も自分たちのものにしているのがCHIBITEだ。フクウェが国立歌舞団に参加し、その後バガモヨ芸術文化短期大学で教えていたので、そこで知ったタンザニアの各地の踊りをCHIBITEにも伝授した。CHIBITEなりにアレンジしたマコンデ人たちのダンス〝リンゴンド″などをかっこよく楽しそうに踊っている。
圧巻なのは、ムヘメというゴゴ人の女性たちが股の間に太鼓を挟んで叩き、踊るダンス。 フクウェの生まれ育ったドドマの村でお祝い事などのときに村人たちによって披露されてきた。さっきも書いたけど、女性が太鼓を叩くのが珍しい社会にあって、これだけ女性たちのパワーが発揮されるダンスはほかにないのではないか。
(2016年9月2日)