タンザニアからの手紙 No.7 Dogodogo Centre
金山 麻美(かなやまあさみ)
9月に来る日本からのスタディツアーの下見にDogodogo Centre (dogo=小さいの意味のスワヒリ語)に行ってきた。ストリートチルドレンだった子供たちが生活する場所である。ニュンバヤサナー(芸術の家:みやげ物やだが、ここからリランガをはじめ、すぐれた芸術家たちが世の中に出ている。「障害」をもった人たちも大勢職人として働いている)をはじめたシスター・ジーンが、Dogodogo Centre の創立者のひとりにもなっている。
知り合いの画家のフランシス・イマンジャマがDogodogo Centreの放課後クラスで週に何度か絵画を教えていると聞いていたので、その教室を見に行きたいと前から思っていたのが、今回図らずも実現した。
正式には、Dogodogo Centre Street Children Trust という。1992年に設立され、1993年にタンザニア政府にNGO登録され、正式にスタートしたそうだ。 街中にDrop Inn という2階建てのアパートのような家があり、そこに男の子ばかり60人ほどが生活している。7歳から17歳までのストリートチルドレンをやめたばかりの子供たちがいるところだそうだ。なぜ男の子ばかりかというと、ストリートチルドレンになるのはそもそも男の子が多いということと、(路上生活もできない女の子はもっと大変ということか)男の子と女の子を一緒に生活させるといろいろ問題が起きる可能性があるからだそうだ。勉強部屋、食事部屋、保健室、職員用のオフィスなどの部屋に分かれている。 プログラムマネージャーのマノリさんによると、ここの子供たちは路上生活をしている時に大人にDogodogo Centreに連れてこられたケースもあるそうだが、ほとんどの子供たちは自分からやってきたということだ。それだけストリートチルドレンの間で、Dogodogo Centreはよく知られているらしい。
Drop Inn の子供たちが寝る部屋は、バスケットコートひとつ分くらいの広さだが、ベッドがない。床にゴザなどを敷いてここに60人の子供たちが寝るそうだ。なぜベッドを置かないかというと、あまり居心地を良くしないためらしい。 実は、Dogodogo Centre は、Kigogoという場所にも家を持っていて、Drop Inn で生活態度の良くなった子や、勉強などのやる気の出てきた子をそこに移すということだった。年長の子が移されるケースが多いそうだが。
Kigogo Homeは、街中から車で20分くらいの場所だ。庭もある一軒家でまわりも住宅で落ち着いた雰囲気。1995年からここを使っているということだった。木の椅子とテーブルがいくつも置かれた食堂件勉強部屋が一階にあり、テレビもある。3つある子供部屋には、それぞれ2段ベッドが6つ入っている。蚊帳もついていて、小学7年生の男の子たちが何人かベッドに座って、中学に行くための試験勉強をしていた。30人ほどの子供たちが暮らしている。案内してくれたのは、コックをしているゴスウィンさんで、彼は、子供たちが学校から帰ってきたらすぐ食べられるようにするために昼食だけ担当しているそうだ。午後4時過ぎだったが、食堂にはおそい昼食のウガリ(すごい大量)を食べている子供たちが3人ほどいた。朝食と夕食は子供たちが作るということだった。大きななべの置いてある台所もあった。
ストリートチルドレンになる子供たちは、親のいない子供もいるが、親がいても家庭の問題で飛び出してくる子もいる。Dogodogo Centreでは、学校の長い休みの時には親のいない子も親戚などを頼るなどして、なるべくその子の出身地に帰すようにしているそうだ。将来職を身に付けたときに都会に残るよりも自分の血縁や地縁のあるところで助け合いながら暮らしていったほうがいいという考えからだそうだ。 また、Dogodogo Centreにいる子供でも、親もとや親戚と連絡を取り、センターの人がそこで子供が暮らせそうだと判断し、子供側が了承した場合は帰すようにもしているそうだ。
放課後の活動は、TCC(タンザニアタバコ会社)が提供するTCCの施設でやっている。 Kigogoから車で15分くらいのChagombeという場所にあるのだが、テニスコート、バスケットボールコート、サッカー場などもあり、広々としていてとても気持ちのいいところだった。1階が吹き抜けのレストランバーになっている建物の2、3階に小さめの教室のような部屋がいくつかあり、TCCがDogodogo Centreに無料でかしてくれているということだった。その上、美術や音楽の先生たちの交通費や、子供たちの移動のバスの運転手代やガソリン代なども出し、活動に参加した子供たちには毎回ソーダ1本ずつ配られるのだそうだ。やるじゃないかTCC。
5時すぎに私たちが着いたときには、オルガンや、ギターなどの西洋楽器を演奏しながら踊り歌うグループと太鼓のグループ、工作グループなどが活動をしていた。Drop InnとKigogo Homeと両方から参加したい子供たちが来ている。その日は木曜日だったが、金曜日にはサッカー教室もあるそうだ。光のいっぱい入る明るい教室や、さわやかな風の吹く屋上で、子供たちは、それぞれの体や手足をのびのびと動かし、とても気持ちよさそう。工作のグループは、新聞紙などを使った張りぼてで、動物のお面を作っていた。ハイエナやサル、サイなどいろんな動物たちの個性的なお面ができあがりつつあった。プロの画家の先生のアドバイスを聞きながらもそれぞれのやりたいように作っていてとても楽しそう。一緒に行った娘の知世(11歳)も参加したがっていた。
できあがった絵や、切り紙貼りなどの作品なども見せてもらったが、どれも個性的というかユニークというか、思い出すだけで笑えて、いや微笑んでしまうような作品がいくつもあった。近いうちに展覧会をひらいて、作品を売るということだったので、ぜひいくつかコレクションしたいと思っている。
このほかにも小学校卒業後、中学に入学した子供たちの住む家や職業訓練学校併設の施設などもあるそうだ。がんばっているDogodogo Centreである。 放課後クラスでの子供たちの表情はとても生き生きとしていて、作り出す音や物もすごく楽しそうで、疲れ気味だった私のこころまでホップステップジャンプしてしまった。子供たちが元気だととてもうれしい。 (一部敬称略)
(9月1日)