
白川
タンザニア歳時記・No.6― タンザニアのりんご―
金山 麻美(かなやまあさみ)
さて、りんごのスワヒリ語での名称はいかに? 英語-スワヒリ語辞典で調べると、ありました。apple は、tufaha ということです。しかし、です。イリンガ出身で、「小さい頃、よく食べたよ」というタンザニア女性にりんごを見せて、「これはスワヒリ語ではなんちゅうの?」と聞いたところ、「apple」。「他にはないの?」「ない」「tufahaって辞書には書いてあるけど」「そんな言葉は知らないわ」。 その後、市場のおじさんをはじめ、10人ほどのタンザニア人に尋ねて見ましたが、みな、答えは同じ「apple」。一人だけ、「apple」と答えた後に、しばらく考えてから「tufaha とも言うかな?」と答えた人がいましたが。彼は、スワヒリ語の本場?ともいうべきザンジバル島とゆかりのあるムスリムでした。 ちなみにスワヒリ語辞典で「tufaha」を調べると、「tunda lenye nyama ya majimaji matamu na ambalo likiiva agh. huwa jekundu.」と書いてありました。 日本語にすると、「みずみずしく甘い果物で、熟すと例えば赤くなる」ということです。りんご、ですよね。でも、知る人ぞ知る言葉なのでありました。 質問に答えてくれた人たちに「りんごは好き?」と聞くと、一様に「好きだよ。買って食べることもあるよ」と答えてくれましたが、どうもその表情を見るとお愛想というか、実はマンゴやバナナなどに比べれば甘さも落ちるし、それほど好きではないのでは…と裏読みしたくなるような感じでありました。
まあ、りんごがタンザニアで市民権を得るにはまだまだなんでしょう。でも、マンゴもパパイヤもいいですが、タンザニアのりんごも、もしかしたらアダムが食べたのは、これかも?というような、または、田舎から出てきたばかりの娘のような、懐かしさや素朴さがあります。ゴージャスな日本のりんごに慣れてしまった方には特に、一味の価値ありだと思いますので、もし、めぐり会った暁には是非ご賞味くださいませ。
(2003年5月1日)