白川
-ルカニ村はバナナだらけ-
根本 知世さんより
辻村さんが言うには、わたしが行った2007年12月はルカニ村にバナナの木が通常より多く生えていたらしい。村の人曰く、今年は雨が多いせいで、コーヒーの木がダメになり、代わりにバナナの木が
そのせいか、わたしの泊まっていた家でもバナナの料理がたくさん出た。調理用バナナを揚げたもの、調理用バナナのスープ(ムトーニ)、調理用バナナのシチュー。甘いバナナのデザートもある。バナナづくしである。
調理用バナナを揚げたものは、ただ単に揚げただけなので、味はついていない。自分の好みで塩をかけたりするのだ。形こそ違えど、味はじゃがいもとそう変わらないものだった。
ムトーニはバナナの味しかしなかった。それは、どろどろしたスープで、甘くない。わたしはあまりおいしいとは思わなかったのだが、「7年前、この家に来たときにはたくさん飲んでたよ」と言ったのは、その家のお母さん兼調理人のママ・ビクター。舌が変わってしまったのだろうか。
肉やお野菜などが入っている調理用バナナのシチューは、わたしの家のダダ(お手伝い)さんが日常に作ってくれるものと似ていたので、おいしく食べられた。
もちろん、バナナ料理でないご飯も出てくる。香辛料をいっぱい使った炊き込み御飯(ピラウ)、マカロニ、とうもろこしを乾燥させてその粉をお湯で練り上げたもの(ウガリ。日本で言えば、お米のようにポピュラーなタンザニアの主食)、トマト味のシチュー(これは白ご飯やマカロニやウガリ
タンザニアではピラウはお祝い料理として出される。それは、結婚式だったり、成人式だったり、さまざまである。この時、泊まった家で出されたのはもてなしの意味だろうか。ピラウは香辛料をたくさん使う。それがいい香りといい味にしてくれる。また、ピラウには、じゃがいもと肉がいれられる。わたしはピラウが好きで、ママ・ビクターが作ったピラウも気に入ったのだが、わたしの家のダダ(お手伝い)さんが作ってくれるもののほうが好きだった。ダダ(お手伝い)さんが作ってくれるものは、もっと味が濃い。香辛料の味がする。ママ・ビクターの作ったものは、味が薄い。ママ・ビクター自身、「ピラウを作るのは、得意じゃないのよ」と言っていた。
ウガリは米のように全く味がしないものなので、トマト味のシチューや、ムチチャ(タンザニアでよく食べられている葉っぱ)を炒めたものと一緒に食べたりする。ウガリは手を使って食べるものなので分かるのだが、チャガ(キリマンジャロ山付近に住む民族)のウガリはわたしが家で食べているものより少々硬いし、少々苦い。とはいっても、別にまずいわけではない。
トマト味のシチューは作る人によって違うのだが、大体は肉とじゃがいもが入っている。あとは、にんじんを入れたり、おくらを入れたりもできる。ルカニ村で作られたものは、スパイシーな味がしたので、香辛料が入っていると思われる。
ルカニ村に限ったことではないが、知人を訪問しにいくと、もてなされる。チャイや、卵焼きが出たことがある。それだけでなく、バナナやアボガド、卵などをもらったこともある。時には、「一緒にお昼ご飯を食べないか」と誘われることもある。「これが僕が日本に太って帰っていく理由だよ」と、ルカニ村に毎回調査に来る、辻村さんが言っていた。なるほど、そうであろう。皆善意でやってくれていることであり、これが一種の文化のようなものだから、容易に断ることもできないのである。
2007年12月