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Habari za Dar es Salaam No.10   Sokwe Mtu ― チンパンジーの世界 ―

根本 利通(ねもととしみち)

 タンザニアの観光資源としては、まず大自然、野生動物が挙げられる。指定されているユネスコの世界遺産でも、セレンゲティ、ンゴロンゴロ、キリマンジャロ、セルーと多い。(それ以外にキルワ、ザンジバルと歴史・文化的遺産があるのもタンザニアの特色ではあるが)。野生動物と言っても主体はセレンゲティ、ンゴロンゴロ、セルーに代表される野生の王国、つまりライオン、ゾウ、キリン、ヌーといった面々で、日本から多くの撮影クルーが来て、テレビなどで紹介している。 タンザニアがテレビに映る頻度としてはこういった類が多い。

 さらに野生動物としてはチンパンジーを扱った番組がこれに次ぐだろう。チンパンジーは人類に最近縁の動物として、また絶滅に瀕している大型類人猿(ゴリラ、ボノボ、オランウータンなど)の一種として、ユネスコの世界遺産種に指定しようという動きがある。かつてはアフリカ大陸に広範に分布していたが、動物園用、サーカス用、実験用、そして食用として減っていき、今は種の存続が脅かされる状態に陥っている。 タンザニアはチンパンジーの分布としては一番の東端に位置する。数の多い西チンパンジーは森林性なのに対し、タンザニアのチンパンジーはその森林とサバンナの境目に生息していることに注目されてきた。人類の起源の地の候補(ライトリ、オルドヴァイ)としてもタンザニアは有名だが、かつて大サバンナ探検隊を組織した日本の人類学者の関心は「森林からサバンナに出てきたサル」というテーマにあった。

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 タンザニアでチンパンジーが容易に観光客に観察できる場所としては、ゴンベ渓流国立公園とマハレ山塊国立公園の2ヶ所がある。ゴンベはいまや自然保護のチャンピオンとなっているイギリスのジェーン・グドール氏によって1960年に開かれ、狩猟、肉食、道具の使用などが発見された。キゴマのすぐ北、ボートで2時間ほどの湖畔にある。マハレはキゴマから南へボートで8~12時間行った湖畔で、上記大サバンナ探検隊の延長上に、京大の西田利貞氏によって1965年餌付けが成功し、チンパンジーの社会構造の解明が進んだ。現在2ヶ所では長期調査が継続中である。

   さてゴンベとマハレは、西のコンゴから続く低地多雨林の延長線上にあり、タンザニアに広がる乾燥疎開林(ミオンボ林)~サバンナへの過渡的な地域で、中に入ると森林の密度は濃い。私自身がコンゴの深いジャングルは経験していないので比較のしようがないのだが、チンパンジーの生息には問題がないのだと思う。

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 ただそこからさらに東に向かったチンパンジーはどうやってサバンナに出たのだろう?マハレの東にはウガラと呼ばれる広範な低湿地帯が広がっており、川に沿って濃い河辺林があり、その周りをミオンボ林が取り巻いている形になるという(私はキゴマへ向かう途中の飛行機の上から目を凝らしたが、はっきり分からなかった)。その河辺林を利用しながら、チンパンジーはミオンボ林を横断するようになり、ウガラ地域のサバンナの極めて広範囲を移動する(遊弋域とする)チンパンジーの群れが生まれたらしい。あくまでもこれは私の素人的聞きかじりであるが、そのサバンナ・チンパンジーを研究する日本人の研究者たちがいて、もう10年近く調査が続いている。

  マハレの森林はかなり深く、食物となる果樹も多い。チンパンジーは地上に降りなくても、木から木へと移動することが出来る。しかし、ウガラのチンパンジーは疎開林だから、例えば追い詰められた時に逃げ切れなくなることがある。否応なしに地上に降り立ち移動しないといけない時、ライオンやヒョウのような大型肉食獣に直面することもあるだろう。また乾季の食物が少ない時はどうするのだろう?なぜ豊かな森林からサバンナに出ようと「冒険心」を持ったのだろう?好奇心はつきない。

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  京都大学の霊長類研究所の加納隆至さん(現在は退官されて名誉教授)を代表とした、伊谷原一さん、金森正臣さん、小川秀司さんのグループで毎年交代でウガラへ向かい、調査を繰り返している。サバンナ・チンパンジーは遊弋域が500m2以上に及ぶとされる広大な範囲を移動しているから、簡単には出会えない。まして餌付けされているわけではないから、遭遇してもすぐに逃げられてしまう。だから2ヶ月間の調査でも、個体の観察時間は限られていて、それ以外は巣から採集した糞や毛を持ち帰ってDNA分析などをするといった地道な努力が続けられている。

 その地味なサバンナ・チンパンジーを映像に収めようと、昨年12月に伊谷さんを案内に日本のテレビクルーが4週間ほどウガラに入った。実はこれは2回目で、最初は昨年2月に2週間ほど入ったのだが、その時は映像に収めるのに失敗し、今回は2度目の挑戦であった。

 「今回もまず映像には撮れないさ」というのが出発前の伊谷原一さんの言だったが、果たしてその結果は?   放映は2月23日(日)16:05から、75分のスペシャル番組で、関西・フジ系列で全国放映とのこと。「驚異のアフリカ類人猿紀行~進化の隣人と生きる」乞う!ご期待。

  ☆参考:加納隆至、黒田末寿、橋本千恵編「アフリカを歩くーフィールド・ノートの余白に」(以文社2002)        

(2003年2月1日)

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