• 白川

Habari za Dar es Salaam No.144   "Sensa 2012-3" ― 国勢調査2012年(3) ―

根本 利通(ねもととしみち)

 2012年8月に実施された独立後第5回の国勢調査の第1回報告集(行政区毎)「国勢調査2012年(2)」は2013年3月末に刊行されたが、9月末にそれに続く第2回報告集が出た。今回は年齢・性別の分析である。旧聞になってしまったが、紹介したい。

5歳毎の人口ピラミッド  今回の報告集のなかで分析の対象となっているものは以下の項目である。  ①幼児(1歳未満)  ②幼児(0~4歳)  ③子ども(0~14歳)  ④子ども(0~17歳)  ⑤若者(15~24歳)  ⑥若者(15~35歳)  ⑦小学校学齢(7~13歳)  ⑧中学校学齢(14~17歳)  ⑨労働年齢(15~64歳)  ⑩出産可能年齢女性(15~49歳)  ⑪老年(60歳以上)  ⑫老年(65歳以上)  ⑬扶養  ⑭都市居住

 私は人口統計学の知識がないので、素人がおもしろいと思ったことを記したいと思う。初歩的な誤解があるかもしれない。また特に断らない場合は、統計はタンザニア全体のものである。報告書にはタンザニア全体、本土、ザンジバルと区別して数字は載っている。州毎に数字が載っている場合は、30州(本土25州、ザンジバル5州)である。

 人口ピラミッドは典型的な「途上国」型のピラミッドだと思う。ネギ坊主型の「先進国」型と比べているグラフも載っていた。それにしても子どもの比率が高い。14歳以下の子どもが43.9%を占める。ため息が出そうだ。少子化の日本から見れば羨ましいという部分もあるが、増大する人口を養うだけの食料生産はどうするのだろう。単純に工業化すればいいという時代ではない。

 さて、上記の分析項目のなかで、私が興味を感じた項目を取り上げてみたいと思う。③⑥⑨⑩⑫⑬⑭である。まず一覧表を作成してみた。まずその項目の全国平均の%を表示し、その数字の大きい州の全国1位、2位と最下位(30位)とその上(29位)の州と数字を記入した。  まずダルエスサラーム州であるが、子どもと老人の比率が全国最下位であり、一方若者、労働年齢、出産可能女性の比率は全国トップである。これは完全に(100%)都市化されているためだろう。扶養率というのは、労働年齢(15~64歳)の人口を分母に、子ども(14歳以下)と老人(65歳以上)人口を分子にして出した比率である。全国平均は91.5であるが、100を超えるということは、単純にいうと労働人口より扶養される人口が多いということになる。 都市では単身者が多いから、この数字が低ければ低いほど都市化が進んでいるとも解釈できる。ダルエスサラームの扶養率は50.8%と抜けて低い。

 ダルエスサラームと似た傾向をもっているのが大ザンジバル市である。下記の表中で「Urban West」とあるのは、ザンジバルのストーンタウン周辺の狭義のザンジバル市とその郊外にある西部県のことである。ほとんどの項目でダルエスサラームに次ぎ2位、もしくは最下位から2位である。子ども人口は39.8%(25位)でやや多い。ほかに都市化の指標となる数字が高いのは、アルーシャ、ムワンザ、ムベヤ、キリマンジャロなどの州であるが、項目によってばらつきがあるので、検討を要するだろう。ちなみに都市居住率でいうと、3位ムワンザ(33.3%)、4位ムベヤ(33.2%)、5位アルーシャ(33.0%)となっている。名目上の首都があるドドマ州は23位(15.4%)である。

全国平均1位2位29位30位子ども43.951.3(Simiyu)50.5(Geita)37.8(Kilimanjaro)31.6(Dar es Salaam)若者34.746.8(Dar es Salaam)39.4(Urban West)30.9(Simiyu)30.7(Singida)労働年齢52.266.3(Dar es Salaam)58.0(Urban West)46.9(Mara)45.5(Simiyu)出産可能女性47.361.9(Dar es Salaam)54.0(Urban West)42.9(Mara)42.3(Simiyu)老年3.97.0(Kilimanjaro)6.7(Mtwara)2.1(Urban West)2.1(Dar es Salaam)扶養91.5119.7(Simiyu)113.2(Mara)72.3(Urban West)50.8(Dar es Salaam)都市居住29.6100.0(Dar es Salaam)84.5(Urban West)7.0(Simiyu)6.1(South Unguja)(単位:%)

 ダルエスサラームと反対の傾向をもつ州はシミユ州だ。上記7項目中6項目に名前が出てくる。シミユ州は昨年設立された州で、ヴィクトリア湖東岸のムワンザ州とシニャンガ州を分割再編成された。農業牧畜地域である。シミユ州と似た傾向をもつのはマラ州、ゲイタ州だろう。共にヴィクトリア湖畔の州である。いわゆる「開発が遅れた地域」ということになるのだろうか。

 女性の出産可能年齢人口の比率が高いのはどういう州だろうか?女性のなかに占めるこの年齢層の高さということであるから、女性の数の多寡とは関係ないだろう。1位ダルエスサラーム(61.9%)、2位大ザンジバル(54.0%)に続き、4位アルーシャ(51.0%)、6位ムベヤ(48.5%)と都市化傾向の高い州が出てくる。しかし、3位に南ウングジャ(51.0%)、5位に北ウングジャ(49.3%)とザンジバル島の2州、8位にリンディ(47.9%)、10位にムトワラ(47.2%)と南部の州が入る。ヴィクトリア湖周辺のゲイタ、カゲラ、マラ、シミユが23位、25位、29位、30位となっている。これらの下位州は老年者も少ないから、単純に子どもの人口が占める率が高いと理解したらいいのだろうか?

 扶養率というのは、都市化と大きな関係があるのだろう。扶養率が100を超える州は全国に14州ある。全国の約半数だ。地図で濃く表示されている州で、シミユ、マラ、ゲイタ、カゲラ、シュニャンガのヴィクトリア湖周辺、ルクワ、キゴマ、カタビ、タボラの西部の州、シンギダ、ドドマ、マニヤラという中央部の州、そしてペンバ島の2州である。伝統的な農牧業地域、特に遊牧がまだ主要な生業となっている地域ということができるだろう。しかし成年男子の都会への出稼ぎ率が高いと想像される。

 第1回報告集で分析された「性比」では、シミユは25位(92)、マラは22位(93)である。ゲイタは金鉱山があるせいか4位(98)と男性人口が多い。また同じく第1回報告集による「世帯人員」では、多い順に1位シミユ(6.9人)、2位ゲイタ(6.1人)、3位タボラ(6.0人)と1世帯当たりの人数が多い。ちなみにこちらの方の30位はダルエスサラームではなくムトワラ(3.7人)で、29位はリンディ(3.8人)であった。ダルエスサラームは28位(4.0人)。

州毎の労働年齢人口の比率
州毎の扶養率

 都市化率というのは規定が難しいだろうが、この報告では「都市地区」に居住している人口の比率を出している。1967年の国勢調査では都市居住率は全国平均6.4%だったが、その後13.8%(1978年)、18.4%(1988年)、23.1%(2002年)と推移して、今回は29.6%とされる。ダルエスサラームは2002年には93.9%だったが、今回ついに100%になった。今回2位(84.5%)の大ザンジバル市の前回は81.9%であった。

 同様に都市居住率の高い州を探ってみると、今回3位のムワンザは20.5%→33.3%、4位のムベヤ20.4%→33.2%、5位のアルーシャ31.3%→33.0%という変化である。都市化が進んでいたアルーシャ州は伸びが鈍化し、ムワンザ州、ムベヤ州が同じような伸びで追い抜いていったことが分かる。注意すべき点は、これは州単位であって、ムワンザ市、ムベヤ市、アルーシャ市ではないことである。それぞれの都市に限れば今回はすべて100%になっている。州単位での都市化の進行が激しいのはダルエスサラームの周辺のコースト州だろう。前回の21.1%→32.8%と伸びている。

 キリマンジャロ州のことを少し考えてみたい。キリマンジャロ州はコーヒーという最有力商品作物をもち、チャガ人、パレ人といった民族の居住地で、植民地時代から教育水準が高いいわゆる先進州である。CHADEMAという現在の最有力野党の創立者、議長を輩出し、自由主義経済志向の強い州である。

 ③(子ども)の比率は29位(37.8%)でダルエスサラームに次いで低い。⑨(労働年齢)では4位(55.1%)、⑬(扶養)では27位(81.4%)である。ここらはダルエスサラームと同じ都市化の傾向を示している。しかし、⑥(若者)は少なく19位(32.5%)に過ぎない。つまり、労働年齢人口も壮年層が多いということだ。若者は都会に出ているのだろう。さらにキリマンジャロ州の顕著な特色としては、老年人口が多いということで、⑫(65歳以上)でも全国トップである。

 これはどういうことなのだろうか?都市化の指標と見られる項目ではダルエスサラームに似た傾向を示すが、老人人口はダルエスサラームとは正反対である(トップと最下位)。キリマンジャロ州は気候がよくて長寿者が多いのか?あるいは都会に出て国家公務員とかビジネスマンとして成功した人間が、老後故郷に戻って暮らす還流率が高いのか?キリマンジャロ州の村を2つ知っているが、子どもが少ない、年配者が多い、過疎化しつつあるという雰囲気は感じたが、分析は避けたい。

州毎の都市化率  一方、ムトワラ、リンディといったタンザニアの中でも遅れていると称される南部の州はどうだろうか?キリマンジャロ州とは経済的には正反対の特色を持つはずだが、上記の項目から見ると似たような傾向を示している。③(子ども)はムトワラが28位(38.5%)、リンディが26位(39.3%)である。⑥(若者)ではムトワラ26位(31.7%)、リンディ24位(31.9%)と低い。特に上記の表には掲載しなかったが、⑤(若者25歳以下)ではこの2つの州が29位、30位を占める。子ども、若者の少ない州なのだ。

 しかし⑨(労働年齢)はムトワラ6位(54.8%)、リンディ9位(54.4%)と順位が高くなる。。キリマンジャロ州と同じ壮年層が多いのだ。⑫(老年)もキリマンジャロに次いで、ムトワラ2位(6.7%)、リンディ3位(6.3%)となっている。「性比」でも、ムトワラ29位(89)、リンディ26位(92)であったから、出稼ぎ率が高いとは想像される。

 経済的先進州であるキリマンジャロと後進州であるムトワラ、リンディがなぜ人口指標では一定同じ傾向を示すのか?タンザニア銀行(BOT)による州毎のGDP比較を参照してみよう。この統計にはザンジバル5州は含まれず、また本土も分割再編成前の21州でのものである。しかし、キリマンジャロ、ムトワラ、リンディ州には変更はない。新聞報道がいい加減で統計年度は明記されていないが2012年だと思われる(BOTのウェブサイトでは見つけられなかった)。それによれば、州毎の1人当たりのGDPのトップはダルエスサラームだが、キリマンジャロは5位と高位グループにいる。一方、リンディは10位、ムトワラ14位(各21州中)と低位ではなく中位グループに入っているのに気がついた。天然ガスの産出で大きく変動する気配を見せるムトワラ、リンディが次回の国勢調査でどう変わるか、注目したい。

 おまけで気がついたことである。年齢別人口を見ていたら偶然気がついたのだが、30歳は105万人いるのに、31歳は38万人、29歳は49万人しかいない。日本での丙午のようなことがあったとしても、この落ち込みは極端だ。31歳というと1981年生まれだから、カゲラ戦争はもう終わっていたし、大干ばつがあったのかと記憶をめぐらした。しかし、さらに見ると19歳は77万人、20歳は113万人、21歳は63万人である。39歳は33万人、40歳は77万人、41歳は20万人である。49歳は27万人、50歳は48万人、51歳は17万人である。59歳は9万人、60歳は37万人、61歳は8万人である。69歳は5万人、70歳は27万人、71歳は4万人である(万以下は四捨五入した)。

 この切りのいい年齢の数字はどう考えても自然ではない。中間の年齢の数字の変化と比較しても一目瞭然である。これは「不作為の作為」だろう。つまり国勢調査は家庭訪問によって行われる。調査員が訪問した際に、出生証明書や身分証明書の提出を求めない。農村部ではそんなのを持っている人は少数だろうし、持っていたとしても正確な生年月日が記されているとは限らない。「おいくつですか?」「うん、50歳」という会話が交わされたことを想像するのは難くない。こういった調査のもとに成り立っている統計だから、数字最重視の経済学者なんか困るんだろうなと、にやっと笑ってしまう。政府の網に捕らわれない人たちがいるのだ。

☆参照文献☆ ・2012Population and Housing Census(Population Distribution by Age and Sex 2013) ・2012Population and Housing Census(Population Distribution by Administrative Units 2013) ・『The Citizen』2013年10月4日号

(2014年4月1日)

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