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Habari za Dar es Salaam No.22   Mgawo ― 計画断水 ―

根本 利通(ねもととしみち)

 日本では寒波、大雪の便りが聞かれるころ、ダルエスサラームは真夏。当然のように熱帯夜で、夜何度も起き、明け方には寝巻きが汗ぐっしょりになる。今年は10~11月の小雨季に余り降らなかったから、大地が熱くなっていたのだが、、最近は少し雨雲が広がり、時々雷雨が来て涼しくなることもあるが、例年よりは暑いように感じる。

 こういう時に水が出ないと非常に辛い。ダルエスサラームに定住するようになって今年で20年目になるが、計画断水は初めての経験である。

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 Mgawoというのはスワヒリ語で、英語ではRationingなどと表記されている。「配給」「割り当て」といった感じだが、実際には今まで「計画停電」の場合にに使われてきた。いつ始まったのかは記憶にないが、水力発電の頼る比率が極めて高いタンザニアでは3~5月の大雨季にちゃんと降らないと、9月頃から発電のためのMteraダム、Kidatuダムの水位が下がり、発電量が制限され、ダルエスサラームのような大需要地では、地区ごとの計画停電が始まる。

 地区毎というのがなかなか曲者で、本当は各地区が平等に順繰りに停電になるのだが、その順番から外される地区があり、例えば政府官庁街、大学、病院地区、市中の商業地区などが最初は停電しない。その内、状況が悪化すると例外は減っていくのだが、当然停電する住宅地区でも、ほんの一部分だけ停電しない区画があって、調べると大臣とか、政府与党の高官が住んでいる家がその区画にあるので、「私の家は隣が元首相の家だからお陰で停電しない」と嘯く日本人もいた。日本からの出張者が、曜日毎に電気のある地区にある日本人の事務所を渡り歩いて、パソコンを打っていたという喜劇もあった。まだジェネレーターが一般に普及していなかった80年代の話である。

 1993年はの旱魃だったから、計画停電もひどかった。週7日停電、つまり毎日昼間は電気が来ないのだ。夜はさすがに防犯上の理由から電気を戻すが、それも19時に戻るのならならいいが、夕飯時を過ぎた21時頃に戻り、朝6時には消えるようになると、暑い時期冷蔵庫や冷凍庫の中のものがどこまで持つか、非常に不安になる。週7日停電の時は、半分やけだったね。

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 さて今回の話題は12月17日に始まった「計画断水」である。電気と違って代替物はないので、非常に堪える。暑い時期だし…。地区毎に週2~3回水が昼間に出る、他の曜日は断水することになっているのだが、実際にはそんな簡単に本管の栓の開閉がスムーズにはいかないので、3~4日連続で出たり、また連続で止まったりする。計画断水が発表されたその当日の朝に、バガモヨから水を引いている本管が破裂し、出るはずだった我が家は水が出なかった。その後、我が家は比較的恵まれていて、水が出る日が多いが、 洗濯をする日、お客さんをする日(料理をたくさん作る日)は、水が出ているかどうかを確認してからやる。

 ダルエスサラームの地区によっては、本管から遠く、水道管が細いため水圧が低く、水が出るのが遅れ、早く切れたりする。地区によっては1週間水が出ないということがままある。そうすると女たちがバケツを頭に載せて水を運ぶ姿が頻繁に見られるようになる。それは井戸から汲んでいる場合もあるが、本管のどこかに穴が開いていて(誰かが開けたのだ!)、そこに人が群がって順番で水を汲む。 あるいはムココトーニという荷車に水を積んで男たちが売り歩く。20リットルで500シリング(=約50円)。その水が水道管からの盗水ならまだしも、自家製の井戸からだと、ダルエスサラームの水は塩分を含んでいるから、洗濯その他にはいいが、調理用、飲用には問題があり、下痢する人が多くなり、あるいはコレラが流行したりする。

 タンザニアが社会主義だった時代は、主要産業は公営化されていたし、電気、水道、通信(電話・郵便)は当然公社によって運営されていた。社会主義官僚制の悪しき部分を代表し、非能率、腐敗、非常識がまかり通っていたが、特に水道はひどかった。 電力公社(TANESCO)、通信公社(TTCL)には日本のODAが何度も入ったし、JICAの専門家もいた。当時DAWASA(ダルエスサラーム市水道公社)と言われた水道局には一度もODAが付かなかったように思う。もちろん可能性がなかったわけではなく、日本のコンサルタントがかなり長い間、調査を続け「提案書」は出たはずだが、結局実現しなかった。その当時のコンサルの人に聞いたのだが、 「何か機械設備などの援助をするより、経営というか人間の問題がネックだなぁ」という意見が強かった。水道の管理体制は最悪というのが当時の実感である。

 その後民営化の波に乗って、電力、電話会社にはいくぶん(ささやかにだが)サービスという概念が出てきた感じもあり、文句を言うと直しに来ることもあるようになった。しかし水道に関しては旧弊のままである。DAWASAの後、NUWA(全国都市水道供給公社)となり、今はダルエスサラームの水道は都市水道サービス会社が担当するようになったが、その前のNUWAに前払いしていた水道料金を無視して、水道を止めようとしたり、ろくすっぽ水を供給しないくせして、料金の請求、水道を切ることに熱心である。民間会社になったら、公社とは違い儲けなくてはいけないから、それもいいだろうが、まず商品を安定供給することだろう。水という生死を左右する商品が、従来のDAWASA以来の水小役人に牛耳られている状況はお寒い限りである。というのも水道の存在に慣れた都市住民の贅沢だろうか…?  

(2004年2月1日)

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