白川
Habari za Dar es Salaam No.27 Goat Race" ― 山羊レース―
根本 利通(ねもととしみち)
それにしても山羊レースとは…!私はチラシで知ったのだが、今年でもう4回目だという。目的はチャリティーで、目標額は2500万シリング(約250万円)という。どういう目的のチャリティーなのか、主催者の名前もチラシにも、そして広告雑誌にも載っていない、ちょっといかがわしげな話である。 タンザニアが社会主義時代には、賭け事は禁止だったから、カジノや競馬などももちろんなかった。 競馬やカジノを求めてナイロビ遠征した時代が懐かしい。それはともかく、この山羊レース、当然勝山羊投票券がある。
当日は幸か不幸か晴天。涼しい季節とはいえアフリカ、日差しは強い。食べ物屋のテントに潜り込んで、プログラムを開く。主要なスポンサーは、タンザニア醸造(ビール)、英国航空、モビテル(携帯電話)、ホリデイイン、ネドロイド(海運)などで、それぞれの名前を冠したレースがある。山羊レースは全部で6レース。他にも子供たちのレース、ファッションショー、帽子とドレスのコンテストがあり、そうみると仮装したり、派手な格好の白人の男女が目立つ。 山羊レースの周回トラックの横には「メンバーのみ」のコーナーがあり、誰がメンバーなのかと思うと、その派手な格好の白人たちが多く、つまりはスポンサーや山羊のオーナーたちの一角なのだ。
さて、肝心の山羊レース。周回トラックを2周する。第一レースに山羊溜りから10頭の山羊がゼッケンを付けられて、抱きかかえられて入場する。スタート。誰も走らない。 後ろからローラーのようなもので押されていやいや進む。10頭が体を寄せ合って出来るだけ動かないようにする。それを囃し立て、押して勧める。集団でゴールラインに達した時、頭が出ていた山羊が一着。
少し気を取り直して、第三レース。なんとBritish Airways Derby、一着賞金150万シリング!そう言えば今日は英国ダービーの日だ。プログラムには10頭の山羊の名前、出生地、オーナーの名前だけでなく、過去の履歴も書いてあるが、嘘八百。検討の材料にはならない。名前か数字か、あるいは投票所に書き込まれる投票数でしか判断できない。ただそこから倍率を読もうとしても、皆検討材料がないから、売れていない穴山羊を買っても、最終的には似たような売上になっている。
勝山羊投票券は一票1,000シリング。第二レースで我が家族4人で4,000シリング負けた我が家は、今度は5,000シリングを投じて取り返しを目指す。最もパドックで山羊を見て、これ!と選べるわけではないので、5票に分散させる。当たってもチャリティーに取られるかもという心配をよそにレースはスタート。今回も山羊はちゃんと走り、先頭入れ替わりの激しいレース(?)の後、9番が一着。娘が当たり、配当金6,000シリングが戻って来た。やれやれ…。
心配していたチャリーティーの行方。プログラムによると、過去3年間で集まったお金は7000万シリング。今年の目標は3000万シリングで、合計1億シリングにしたいという。去年の寄付先はムワンザの水道、ムベヤの井戸プロジェクト、山羊の品種改良普及など。今年の予定は、HIV陽性の孤児、車椅子、身体障害者の訓練施設、眼科検診の巡回バスなどが挙げられていた。途中で消えないことを祈っている。
(2004年7月1日)