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Habari za Dar es Salaam No.27   Goat Race" ― 山羊レース―

根本 利通(ねもととしみち)

📷 一年中暑いイメージがあるダルエスサラームでも、大雨季の明けた6~7月は涼しく快適な時期に入る。南半球なのだ。この時期にダルエスサラーム在住の日本人会はソフトボール大会や運動会を催すが、スポーツには向いた季節といえる。今日の話題は、山羊レース。数少ないダルエスサラームの娯楽の話。

 それにしても山羊レースとは…!私はチラシで知ったのだが、今年でもう4回目だという。目的はチャリティーで、目標額は2500万シリング(約250万円)という。どういう目的のチャリティーなのか、主催者の名前もチラシにも、そして広告雑誌にも載っていない、ちょっといかがわしげな話である。 タンザニアが社会主義時代には、賭け事は禁止だったから、カジノや競馬などももちろんなかった。 競馬やカジノを求めてナイロビ遠征した時代が懐かしい。それはともかく、この山羊レース、当然勝山羊投票券がある。

📷 さて6月5日(土)当日。会場は通称タザラ・グラウンドといって、日本人会が運動会などで借りる広いグラウンド。開場12時に勇んで行ってみると、サブグラウンド(サッカー場)には車がびっちりと駐まっている。入り口では54ページもある立派なオフィシャル・プログラムをもらう。入場料2,000シリング。 会場内には、普段クリケットをやっている所に周回50メートルくらいのトラックが作られている。その周りにスポンサーのテント、食べ物屋飲み物屋のテントが散らばっている。

 当日は幸か不幸か晴天。涼しい季節とはいえアフリカ、日差しは強い。食べ物屋のテントに潜り込んで、プログラムを開く。主要なスポンサーは、タンザニア醸造(ビール)、英国航空、モビテル(携帯電話)、ホリデイイン、ネドロイド(海運)などで、それぞれの名前を冠したレースがある。山羊レースは全部で6レース。他にも子供たちのレース、ファッションショー、帽子とドレスのコンテストがあり、そうみると仮装したり、派手な格好の白人の男女が目立つ。 山羊レースの周回トラックの横には「メンバーのみ」のコーナーがあり、誰がメンバーなのかと思うと、その派手な格好の白人たちが多く、つまりはスポンサーや山羊のオーナーたちの一角なのだ。

📷  ナイロビの競馬場を思い出す。そこでもやはり馬主たちが集まってサークル的に楽しんでいた。日本の極めて大衆的な競馬に慣れた身にとっては、メンバーのみの様子を見てやや違和感を覚えたものだが、競馬の発祥とは本来そういうものだったのだろう。イギリスの競馬場は知らないが、おそらくそういう雰囲気なのだろう。ダルエスサラームに短期の出張できていた女性が「ヨーロッパの競馬場のようにファッションを楽しんでいる」と言ったのも、そういう雰囲気を捉えたのだろう。暑いダルエスサラームで競馬は出来ないし、1年に1度の白人のお遊びという感じである。

 さて、肝心の山羊レース。周回トラックを2周する。第一レースに山羊溜りから10頭の山羊がゼッケンを付けられて、抱きかかえられて入場する。スタート。誰も走らない。 後ろからローラーのようなもので押されていやいや進む。10頭が体を寄せ合って出来るだけ動かないようにする。それを囃し立て、押して勧める。集団でゴールラインに達した時、頭が出ていた山羊が一着。

📷 颯爽と芝生の上を走ることは期待できないまでも、とことこと走る姿を想像していた私は落ち込む。これでは動物虐待と同じだ…。第二レースは見に行かない。…と歓声が上がって走っている山羊がいる。それほど他の山羊を引き離すわけではないが、確かに走っていて、でもゴール前では他の山羊に逆転される。

 少し気を取り直して、第三レース。なんとBritish Airways Derby、一着賞金150万シリング!そう言えば今日は英国ダービーの日だ。プログラムには10頭の山羊の名前、出生地、オーナーの名前だけでなく、過去の履歴も書いてあるが、嘘八百。検討の材料にはならない。名前か数字か、あるいは投票所に書き込まれる投票数でしか判断できない。ただそこから倍率を読もうとしても、皆検討材料がないから、売れていない穴山羊を買っても、最終的には似たような売上になっている。

 勝山羊投票券は一票1,000シリング。第二レースで我が家族4人で4,000シリング負けた我が家は、今度は5,000シリングを投じて取り返しを目指す。最もパドックで山羊を見て、これ!と選べるわけではないので、5票に分散させる。当たってもチャリティーに取られるかもという心配をよそにレースはスタート。今回も山羊はちゃんと走り、先頭入れ替わりの激しいレース(?)の後、9番が一着。娘が当たり、配当金6,000シリングが戻って来た。やれやれ…。

📷  その後ファションショーや福引があったようだが、思いのほかの晴天に疲れた我が家は第三レース終了で、グラウンドを離れた。白人たちは最後まで楽しむのだろう。体力の差だろうか。ただ全くの白人の世界かと思っていたのだが、タンザニア人もそこそこ参加して、勝山羊投票券を握って叫んでいたのはよかった。

  心配していたチャリーティーの行方。プログラムによると、過去3年間で集まったお金は7000万シリング。今年の目標は3000万シリングで、合計1億シリングにしたいという。去年の寄付先はムワンザの水道、ムベヤの井戸プロジェクト、山羊の品種改良普及など。今年の予定は、HIV陽性の孤児、車椅子、身体障害者の訓練施設、眼科検診の巡回バスなどが挙げられていた。途中で消えないことを祈っている。

(2004年7月1日)

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