白川
Habari za Dar es Salaam No.38 "Great Riftvalley" ― 大地溝帯を行く ―
根本 利通(ねもととしみち)
この5月、久しぶりに大地溝帯を走った。日本でいうゴールデンウィークは、タンザニアは大雨季のさなかで、閑散期。セルーなどのキャンプは閉鎖され、ビーチでのんびりするにも、野生動物を見るにも適した時期ではない。ということで日本からの観光客も少なく、ましてや団体ツアー客なんていない時期なのに、今年はあった!S社の「知られざる大地溝帯を行く」である。
これは、「新しい旅のかたち」という 大津司郎さんというちょっと怪しいアフリカ専門のジャーナリストがリーダーを務めるツアーである。誤解を招くといけないので付け加えると、大津さんはジャーナリストとして怪しいのではない(そんなことは某国営放送テレビなどに任せておけばいい)。人相風体が怪しいのである。ジャーナリストとしては立派な方で、私は尊敬している。念のため。
数年前、テレビの取材で行こうとしたが、その当時はケニアとの国境を利用してソマリ人の強盗団が出没するとかで、軍の護衛付きでないといけないと言われ、断念したことがある。その雪辱というか、長年の念願を果たすことになった。
アルーシャから降りしきる雨の中を1時間半ほど走るとマニヤラ湖が見えてくる。マクユニ分岐からは日本のODAで作られた舗装道路が続く。つい3年前まではマクユニ分岐からもうもうたる砂塵を上げて、サファリ気分(覚悟)になったものだが、今は市街地の雰囲気。
ムトワンブの直前を右折してラフロードに入る。大地溝帯の断層がくっきりとした、その崖下の道を走る。マサイの牛、山羊に混じって時折キリンが見える。ムトワンブ分岐から1時間半、エンガルーカの村に入る。びっしり灌漑された村。14~15世紀の灌漑遺跡のあることで知られる。マサイと戦って敗北したソンジョの作った村跡と言われるが、マサイ姿のガイドの説明を聞いても「今発掘調査中」の部分が多く、余り興味を引かない。
レンガイ山の麓近くにある「神の穴」という小さなクレーターまで来ると、雨季のせいか、穴の中は緑がびっしりと生え、乾季にはマサイが牛を降ろす細い道が見える。ナトロン湖も遠景で見え出す。その後、いくつかのマサイの集落(ボマ)を通り過ぎ、ナトロン湖キャンプに着く。日本からのお客さんが「ウソだろ!」というような質素なキャンプ。
ナトロン湖キャンプは、湖が見えるが湖畔というわけではなく、小さなマサイ・ボマに近接して作られている。オーナーはイギリス人夫妻で、近隣の住民の親愛を集めていたようだが、夫人がガンとなって故国に帰り、オランダ人に売却手続きが進行中だという、従業員(殆どが近隣のマサイ)が不安がっていた。
ナトロン湖キャンプからさらに北上すると、マサイが湖水を天日で干して作った板状の塩を売っている。ドンゴロス1袋Tsh6,000(=600円)、1枚Tsh1,000と言っていた。また温水が湧き出している場所もあった。地球の創世記を感じさせる、くっきりと無駄のない光景。
ある地点から西へ向き、大地溝帯を一気によじ登り、標高2,000mまで登る。曲がりくねった道を行くと、途中いくつか展望ポイントがある。崖の上はマサイもいるが、ソンジョ農耕民がマサイの襲撃に備え固まった集落を山の麓に作っているのが壮観だった。その岩がちの道をさらに行くと、野生動物が散在しており、狩猟区になり、小さな飛行場が見えてくる。2年前だったか「アラブ人のテロリストが国境をフリーパスで飛行機で乗り付け、マシンガンと共にサバンナに消えていく」とあるケニア中心のメーリング・リストで回ったロリオンド地域である。アラブ(アブダビらしい)の王族が、自家用機で来て、ハンティングを楽しんでいるのは事実のようで、その援助による橋などが見られた。アラブ人と見たらアルカイダと言っていた時期だろうが、アフリカに住む人間として迂闊な風聞に踊らされないように自戒したい。
おまけの写真があります。→
(2005年6月1日)