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Habari za Dar es Salaam No.41   "Uchaguzi Mkuu 2005(3)" ― 2005年 総選挙(3) ―

根本 利通(ねもととしみち)

 いよいよ8月20日から、総選挙が始まった。連合政府大統領・国会議員、ザンジバル自治政府大統領・国会、さらには今回は地方議会の選挙も同時に行なわれる文字通りの総選挙である。立候補者が書類を配布される。10月30日の投票日までの2ヶ月余に及ぶ長い選挙戦だ。ただ大統領選挙の行方は見えているといっていい。与党CCM(革命党)のキクウェッテ候補の当選は動かないだろう。

 キクウェッテ現外相がCCM候補に選ばれたのは、10年前のムカパ現大統領がCCM候補に選ばれた際の党大会の最終候補の次点であったし、本土のムスリムという意味でも極めて順当な選択であった。ただ、ムウィニ、ムカパという第2代、第3代の大統領が、下馬評は高くなく、ニエレレの意向を反映したと言われているのに対し、今回下馬評どおり選ばれたのを意外と言えなくもない。 

 5月2~4日に行なわれたCCM全国大会で、キクウェッテが選ばれた過程は次のようであった。まず3月にCCM党本部に指名申請をした11名の候補者につき、党の倫理委員会により調査が行なわれ、その報告、特に汚職に関する報告をもとに、5月2日36名によるCC(中央委員会)が行なわれ、11名に候補者を5名にしぼる。3日には208名のNEC(全国執行委員会)で更に3名にしぼり、4日党の全国大会(最高決議機関)で、2,000名ほどの代議員による投票で候補者が決まるという日程である。

📷 CCからNECへ提出された5名は、キクウェッテ外相、スマイエ首相、キゴダ大統領府国務相(民営化担当)、ムワンドスヤ通信運輸相という現役の閣僚と、サリム元首相であった。ここは順当な結果であったが、マリチェラ元首相(CCM副議長)が早くも脱落したのが目を引いた。NECでの投票は、キクウェッテ78票、サリム45票、ムワンドスヤ33票、スマイエ30票、キゴダ21票、1票無効という結果だった。ここでスマイエ首相が脱落した。翌日の党大会では、投票数1,674票の内、キクウェッテが1,072票を獲得し、サリム476票、ムワンドスヤ122票(無効4票)を大きく離して、候補に指名された

 マリチェラ元首相、スマイエ現首相が早い段階で脱落したことは、いろいろな憶測を読んだ。事前の風評では、このマリチェラ=スマイエ連合は、老練なマリチェラを勝たせ、スマイエは首相職を続投し、その後継=禅譲を狙うという下馬評であった。ただ、マリチェラには強い反対者がCC内に存在し、その汚職体質が嫌われたのだろう。サリムは清廉ではあったが、ザンジバル出身でありながらザンジバル内に敵対者を抱えていたのが弱みであった。キゴダ、ムワンドスヤという学者出身で、ムカパ政権の民営化を推し進めたテクノクラートを、ムカパは後継者に推しているという予測も一部にあったが、CCMのたたき上げ、本流で青年部のホープだったキクウェッテが、10年前には同じく指名選挙に出馬した盟友ロワッサ水畜産開発相の支持を受け、悠々当選した。ロワッサが次の首相候補という専らの噂である。

   キクウェッテはもう54歳(選挙時には55歳)で、若手とは言えない。ムカパがキクウェッテの指名に対して「若手の代表」という言葉を使ったのに対し、「タンザニアの平均寿命が48歳しかないのにどこが若手だ。政府の定年年齢ではないか」と揶揄する文が新聞に載った。ただ若いころからCCMの党員として活躍し、CCにも32歳から在籍、軍歴(最終肩書きは中佐)もあり、この10年間は外相としてタンザニアの顔であった。ジャカヤ・キクウェッテ(JK)を、ジュリアス・カンバラゲ・ニエレレ(JK)と重ねようという宣伝も始まっている。高学歴(キゴダやムワンドスヤは博士号を持っている)テクノクラートに対する、CCM党人派、「庶民派」の勝利といえる。

 野党の反応は概ね好意的というか、順当な人選で敵も少ないので、強い批判は聞かれなかった。ただ副大統領候補が、現副大統領のアリ・シェインであり、連合政府正副大統領、ザンジバル政府大統領候補の3人全員がムスリムということになったのをやや異常とする意見もある。

 現在の大統領選挙に立候補を表明しているのは、以下の通りである。従来の2回(1995年、2000年)は全く同じ4人で争われたが、今回3回目の立候補になるのはリプンバとムレマで、ムカパは引退、チェヨ(UDP)は出馬せずで、10人の候補によって争われている。Ford,NRA,UMD,UPDPという弱小政党は大統領候補を出さず、NCCRの候補を推している。

氏名年齢出身政党ジャカヤ・キクウェッテ54コーストCCMイブラヒム・リプンバタボラCUFアウグスティン・ムレマキリマンジャロTLPフリーマン・ボエキリマンジャロCHADEMAセンゴンド・ムヴンギキリマンジャロNCCRエマニュエル・マカイディマラNLDアンナ・センコロタンガPPTムティキライリンガDPレオナルド・シャヨキリマンジャロDemokrasia Makiniピーター・キアラマラSauti ya Umma

 選挙人登録は、6月の選管発表に依れば、15,858,801人で、目標登録数の96.10%だそうだ。この目標(見込)登録数というのがどこからはじき出されているのかは知らないが、2002年8月の国勢調査のタンザニア総人口が、3,457万人であったことを考えると、その48%に過ぎない。ただ、2000年の総選挙の際の登録人口が1,009万人であるから、大幅な伸びと言える。

📷 焦点となっているザンジバルの選挙人登録は498,000人ということだ。これは国勢調査の数字の50.6%になる。南アのコンピューター会社による選挙人登録で7,000人が二重登録されたり、12,000人が登録を拒否されたり、野党(CUF)が異義を申し立てている。援助国9カ国による国際選挙監視団(日本はUNDPの一員として参加)をザンジバル政府は今拒否する姿勢を示し、前2回に続く不正選挙、選挙後の混乱が予想されている。

 ザンジバル大統領選挙は、2000年と同じアベイド・カルメ現大統領とCUF書記のセイフ・ハマドの一騎打ちになりそうだ。CCMの指名を求めてビラル元主相が、サルミン・アムール元ザンジバル大統領の後押しをうけて立候補した時には波乱を予想されたが、ビラルが周囲の強い圧力を受け、CCの直前に辞退して、NECではカルメに対する信任投票となり、賛成195票、反対11票という結果になった。

 国会議員選挙に関しては、18政党から?人の立候補者が231の選挙区議席を争う情勢になっている。この数字に関してはまだ確定していないのは、全選挙区に候補者を擁立したののはCCMだけだという事情による。野党の候補も大体決まっているが、CCMの予備選で落ちた前大臣、前議員などに野党からの出馬を呼びかけているから、野党候補者が確定していないという事情もある。やはり有力なのは前回選挙区で202議席を占めたCCMの候補だろう。8月3~5日の間に各選挙区でCCM党員による予備選挙が行われ、そこで首位を占めた候補がCCMのCCの審査を経て、CCM候補に決定される。ただ予備選トップが必ずしも審査を通過するとは限らない。 何らかの(汚職が多い)理由で失格とされる人も少数だがいる。また予備選で大臣、副大臣が今回は2名ずつ落選した。その落選した大臣に野党が誘いをかけて候補にしようとしたという噂が飛ぶことがある。噂には根拠があるようで、名前が挙がるのはCHADEMAとかNCCRといった比較的有力野党である。またCCMの予備選の直前に、ダルエスサラーム(CUF)、モシ(TLP)といった野党の有力地盤の議員がCCMに移籍し、その予備選に出るという事態が起こった。この2人とも予備選では惨敗、特にダルエスサラームの元CUF議員は1票も取れなかった。前回激戦の選挙区でCCM候補を破った実力者が何を血迷ってCCMに移ったのだろう?そしてその予備選で圧倒的に勝った候補が、党の審査で失格となると、裏で何かがあったような気にさせる。日本でも政党間の移籍がまま起こるが、タンザニアでの政党は理論、主義というより利権集団だから、与党であるCCMでない限りうまみはないのだという気が強くする。

(2005年9月1日)

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