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Habari za Dar es Salaam No.44   "Uchaguzi Mkuu 2005(5)" ― 2005年 総選挙(5) ザンジバルの結果―

根本 利通(ねもととしみち)

 今年の総選挙は変則的になってしまったが、10月30日に行われたザンジバルだけの選挙の結果をまとめてみたい。複数政党制になって3回目の総選挙である。

 焦点のザンジバル大統領選挙は、アマニ・カルメ現大統領(CCM)が再選を果たし、セイフ・ハマド(CUF)は三度敗北を喫した。  ZEC(ザンジバル選管)発表は以下の通り。   有権者登録数        507,225   総投票数           460,581(投票率90.8%)   アマニ・カルメ(CCM)    239,832(52.1%)   セイフ・ハマド(CUF)     207,733(45.1%)   その他4野党候補の合計   3,403( 0.7%)   無効投票            9,613( 2.1%)

📷 同時に行われたザンジバル国会議員選挙もCCMの勝利に終わった。CUFはペンバに割り当てられた18議席を全て押さえたが、ウングジャの32議席の内、ストーンタウンの1議席しか奪えなかった。CCMは30議席を取った(1議席は再選挙)。CUFはペンバでは84.5%という圧倒的な得票率であったが、ウングジャ島ではCCMが69.8%を押さえ、ペンバとウングジャの分断が目立った。

   CUFは選挙結果の無効、不正を訴えた。CUFの選挙代理人の集計に依れば、大統領選挙は51%対49%でセイフが勝ったはずだという。また80,000人が投票の権利を奪われたという。ただ確定選挙登録者数の数字がZEC の数字と違うし、また無効投票数や他の4候補の得票数が異様に少ないなど説得力に欠ける。「またか…、勝たない限り不正と言うんだろうな…」という本土人の感覚があり、野党陣営にも大きな支持は広がらない。ザンジバル国会に選ばれたCUF議員はボイコットせずに宣誓を済ませるなど、沈静化に向かっている。

 カルメ大統領は新しい内閣を任命した。首相はシャムシ・ナホーダ(Shamsi Nahodha)で、再任。2000年にそれまでの情報省の一役人からいきなり首相に抜擢され、今回はザンジバル国会に西部県の選挙区から当選した。5年後のCCMの大統領候補の一人である。副首相にはアリ・シャムフナ(Ali Shamuhuna)が昇格した。大臣は全員で14名。内女性4名。インド人1名。

 その一方で、10人の原告による「タンガニーカとザンジバルの合邦の公式文書の公開」要求が、ザンジバル高裁に出された。これはCUFの代理人というわけではないのだが、連合政府の合法性に異議を唱えるという意味では、CCMに対する強い批判となる。つまり1964年1月のザンジバル革命後の混乱の中、緊急避難的に4月にタンガニーカとザンジバルが合邦して、タンザニア連合共和国が誕生したのだが、その合法性に異議を唱える人々が常にザンジバル側には多数存在した。つまり「国を奪われた。国連にも議席があったのに…」という思いの代弁である。当時のニエレレ・タンガニーカ大統領とカルメ・ザンジバル大統領のサイン入りの公式文書開示の要求に対し、ザンジバルの司法長官は「公式文書は探しているが見つからない」と非公式に述べている。元々、その存在が疑われていたわけで、今後見つかるとは思えない。先年、イスラーム諸国会議に加盟しようとして、「主権国家ではない」という理由で果たせなかったザンジバルのこと、CUFを始めとする現政権批判勢力と一緒に、分離運動が広がる基盤はあるのだ。

📷 延期され、12月14日の投票に向け、最終盤戦に入っている連合政府の大統領、国会議員選挙の状況に触れたい。延期の原因になったCHADEMAの副大統領候補にはザンジバル出身の女性のアンナ・コム(Anna Komu、55歳)が選ばれ、その出自に他の野党(DP=民主党)から異議申し立てが出たが、選管が却下し、選挙戦が再開された。

 異議はコムの父親がコモロ出身、母親が本土出身で、ザンジバル人の両親を持たず、現在は結婚してキリマンジャロに在住、10月30日のザンジバルの選挙にも参加していないから、ザンジバル人とはみなせないという論拠だった。これは本人がザンジバル生まれで、1964年1月12日(ザンジバル革命)時にザンジバルに在住していたことをもって、選管は却下したが、CHADEMAの亡くなった副大統領候補ジュンベにも同じような異議が出ていた。いわく、ザンジバル出身であるが、今はバガモヨに家があり、生活の基盤は本土で、長いことザンジバルに住んでいない、と。こういう異議は、「正副大統領候補はどちらかはそれぞれ本土、ザンジバル出身であること」という規定がある以上、そしてザンジバルにCCMとCUF以外に基盤がある政党がない現状が変わらない限り続くだろう。副大統領が儀礼的な存在とは言え、大統領不在時にはその代行になるのであるから、今の規定にはやや無理があるように思える。

 タンザニア全体の大統領選挙には10人の立候補者が出ている。が、当選はCCM候補であるキクウェッテ現外相で動かない。圧勝するだろう。CCMの圧倒的な資金力、組織力はそのポスター、街頭宣伝車、配られたTシャツの量を見ていても分かる。地方遊説でも大群衆に囲まれた写真が毎日新聞に載る。使われる車両代はいかばかりだろうか。ダルエスサラームでも他の政党のポスター、運動を見る機会は少ない。かろうじてCHADEMAのボエ候補のポスターを見るくらいで、CUFのリプンバ候補やTLPのムレマ候補のポスターもないことはないが非常に少ない。他の6人のそれは見たことがない。下町に行けばあるのだろうか。

 こういう状況では興味は次点争いで、誰が選挙後の政局に影響力を残せるかだろう。ポスターの数を見る限りボエ候補が有力に感じられる。前回次点のリプンバ候補はムスリム色を払拭できなかったし、前々回次点のムレマ候補はもはや過去の人という感じである。2人共2回続けて落選しているし、新鮮味というか期待がない。特にムレマ候補にいたっては、CCM側が野党統一候補が出ないように温存しているという噂すらある。ムレマによるCUF批判の記事はよく目にする。

📷 次点有力なボエ候補だが、44歳。1961年、つまりタンザニア独立の年生まれで、そのため親がFreemanと名付けたというのが売りである。タンザニア独立後の世代が、トップの指導者を窺うところまで来た。今年までキリマンジャロ州ハイ県選出の国会議員。父親は裕福なビジネスマンで、ダルエスサラームにホテルやディスコを所有していた。今回もケニアからヘリコプターをチャーターして選挙戦に投入してあっと言わせた。現在126ある県を再編成して、4~5の州をまとめたブロック(省?)を再建し、地方分権を進めようと言っている。フレッシュさが期待となり、各地の集会に聴衆が集まる。CCMの集会では、当初CUFのイスラーム色の濃さを叩いていたが、選挙も後半戦になるとはっきりとCHADEMAをターゲットにして攻撃していた。

 国会議員選挙でもCCMの圧勝は動かない。CCMの予備選が終わり、候補が確定した段階でほぼ決まっている。予備選で敗退した現職大臣など大物の野党への移籍も結局起こらなかった。2ヶ月の長い選挙戦の終盤になって、野党でそこそこ有力と言われていた候補が立候補を取り下げて、CCMに復党(あるいは入党)する例がいくつかあった。これは資金が続かなくなったのかと裏のかんぐりも出来るが。キリマンジャロ州、ダルエスサラーム州など野党がそこそこ強い地区、あるいはキゴマやカラツなど個人(野党)人気が強い選挙区がで、どの程度議席を確保出来るかが注目される。巨大与党は腐敗を生むのは現実だから、タンザニア人のバランス感覚が試されている。

 ダルエスサラームの7選挙区の内、前回野党(CUF)が押さえた選挙区選出の国会議員は、なんとCCMに鞍替えして予備選に出馬、惨敗して候補にもなっていない。つまり前回その議員が通ったのはCUFが強かったのではなく、その選挙区選出のCCMの議員が、あまりにも汚職で有名で人気がなかったからだ。今回もダルエスサラームのCCM候補で、2人の現職が不人気だと言われる。いわく「お高くとまって地元の人間の面倒を見ない」、どこかで聞いたような評価だ。果たして選挙の結果どうでるか、漁夫の利はまたCUFだろうか、それとも今回はCHADEMAだろうか。

 今、庶民の関心事は3ヶ月を超えた選挙ではなく、ムヒンビリ国立病院のストライキ。4月に待遇改善要求があり、ムカパ政権が受け入れたがいまだ実現せず、政権交代前に勝ち取ろうと医者がストに入った。多くの医者が解雇されたが、この国の医者不足を考えると、適当に折り合いが付くだろう。問題は1ヵ月半「延長された」内閣のやる気のなさ。首相も送別会が終わり、もう官邸から私邸に引っ越してしまったし、各大臣ももう「終わり」という雰囲気が強く、新しいことが進まない。結果が見えている選挙が長すぎたと言う感じである。

(2005年12月1日)

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