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Habari za Dar es Salaam No.99   "Budget 2010/11" ― 新年度予算 2010/11年度 ―

根本 利通(ねもととしみち)

 新年度予算が発表になった。恒例の6月第2木曜日で、今年は6月10日だった。5年に一度の総選挙の年だから、政権与党がどういう人気取りの予算案を組んでくるかが関心の的だった。スワヒリ語紙『Nipashe』の6月11日号の見出しは「Bajeti ya Kilimo Kwanza(農業第一の予算)」だった。同じく政府系の英語紙『Daily News』にも「予算は農業の成長に焦点」とあり、今年の政府のスローガンであることが分かる。

 ただ、今年は例年になく5月31日に予算案の大枠が事前発表された。翌日の『Daily News』の見出しには「外国援助への依存は25%へ削減」と出ていた。しかし、6月10日に予算案が発表されてみると、11兆1124億シリングと予告されていた歳出が、11兆6096億シリングと、5000億シリング近く増額になっており、歳入は増えていないから援助、借款が増えた勘定になる。最初は数字の羅列になるが、昨年度の予算案との対比を見てみよう。

 (1)今年度の歳出:11兆6096億シリング(前年度比22.0%増)    ・通常予算:7兆7905億シリング(前年度比16.5%増)    ・開発予算:3兆8191億シリング(前年度比35.2%増)  (2)今年度の歳入     ・国内の税収および非税収入:6兆0036億シリング(前年比27.0%増)    ・地方政府の収入:1726億シリング(前年度25.0%)    ・外国からの借款、贈与、援助:3兆2746億シリング(前年度比2.9%増)    ・国内外からの借款:1兆3312億シリング(前年度比23.0%増)    ・商業的借り入れ:7976億シリング(前年度分離表記なし)    ・政府保有株売却益:300億シリング(前年度比50%増)

   結局、自己の歳入(地方政府、株売却益含む)の比率は53.5%で、いわゆる外国の援助依存率は28.2%、それ以外の国内外からの借り入れが残り18.3%を占めるという計算になるのだろうか。『Daily News』の6月11日号の報道は、歳入を60%とする円グラフが載せられているが、どういう根拠があるのか、蔵相の演説にもそんな数字は出てこない。

 援助国・機関として挙げられているのは、イギリス、デンマーク、オランダ、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、韓国、クウェート、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、アメリカ、インド、世界銀行、アフリカ開発銀行、BADEA(アフリカ経済開発アラブ銀行)、EU、グローバルファンド、IMF、クウェートファンド、ノルディックファンド、OPECファンド、サウジファンド、国連諸機関であった(報告順)。

 なお、同じ蔵相の報告では、2009/10年度の経済成長率は6.0%で、2008/09年度の7.4%は下回ったものの、当初見込みの5.5%は上回ったという。2010/11年度の見込みは7.0%となっている。また2009年のGDPは28兆2120億シリングで、国民一人当たりの所得はTsh693,185となっているが、これは割り算に人口の2008年推計(4,070万人)を使っていると思われる。もし2009年末推計(4,190万人)を使えば、Tsh673,317くらいになるはずで、年間の為替平均を$1=Tsh1,330とすれば、$508くらいということになる(2008年は$509だった)。第一次産業(農林畜産水産業)の伸びは3.2%だったのに対し、製造業の伸びは9.9%で、GDPに占める割合も2008年の7.6%から8.6%に伸びた。インフレ率は2008/09年度は10.3%だったが、2010年3月末までの平均で12.1%と上がっている。ただ、2010年4月段階で9.8%まで落ちているので、2010/11年度の見込みは一桁に落ちるだろうとされている。

📷 『Nipashe』2010年6月11日号"  各省庁別の予算を見てみよう。

  ・教育省:2兆453億シリング(前年比17.3%増)   ・インフラ省:1兆5051億シリング(前年比37.3%増)   ・保健省:1兆2059億シリング(前年比25.2%増)   ・農業省:9038億シリング(前年比35.5%増)   ・水省:3976億シリング(前年比14.5%増)   ・エネルギー省:3272億シリング(前年比14.6%増)

 ただ、シリングの下落がこの1ヶ月激しく、現在$1=Tsh1,450前後である。これを昨年6月と比較すると、昨年は$1=Tsh1,330であったからシリングは9.0%ほど下落している勘定になるから、割り引いて考える必要がある。

 この主要6省庁の予算合計は、6兆3849億シリングとなり、総予算の55.0%を占めている。さて、今年の売りの「農業第一」であるが、農業省の予算規模は第4番目であり、また伸びは目立っているが、それでもインフラ省の次である。

主要な税額の増減を見てみよう。増税はやはり、タバコ、ソフトドリンク(炭酸飲料)、ビール、アルコールなどの嗜好品にかけられている。これは毎年のことで、従って今年度の値上げも小幅ではあり、US$換算すれば、ほとんど変わらない。

 さらに車両登録関係費用もアップされている。バイクの登録料が、Tsh35,000かたTsh45,000へ、車両登録料がTsh120,000からTsh150,000とされた。また年間のライセンス料も、例えば、1,501~2,500ccクラスはTsh100,000からTsh150,000へ、2,500cc以上の車両はTsh150,000からTsh200,000へという風に増えている。

 減税もしくは免税になったものは、次のものである。まず農業器具関係で、耕運機などのVATが免除になった。また園芸(生花栽培)、酪農(乳製品)関係のVATも多く廃止された。VAT免除はサトウキビ、サイザル麻、紅茶の農園、あるいは牧場から加工工場へ運ぶ交通手段にも適用され、また5トンから20トンの大型車の減税も実施される。生花栽培はケニアとの競争をにらんでいると思われる。ただ各種の免除も、登録された会社、農協などへの適用とされ、小農民よりも外資の優遇につながらないかという心配がある。

 他に60歳以上、あるいは身体不自由者で、自己の収入がない人たちの家屋税を、地方自治体の認定によって免除するとなっているが、どれほどの恩恵があるのか、疑問に思える。

 ザンジバル自治政府の予算案は、今年は連合政府のそれよりも1日早い6月9日に発表された。総予算は、4446億シリングであるから、前年比7.8%増加である。その内歳入目標は1717億シリングで、前年比7.6%増加。依然として海外からの援助に頼る比率が高く、自前の歳入は38.6%に過ぎない。(前年とほぼ同じ)

 昨年は最低賃金のアップがあったが、今年は見送られた模様で、ただ年金が月最低15,000シリングから、25,000シリングにアップになると発表されている。ただ、25,000シリングは日本円に直すとわずか1,650円に過ぎず、これでは生活できないのは明らかだ。ザンジバルの蔵相は「民主主義と開発のための予算」と称しているが、首を傾げさせる。 

 6月10日に同じ東アフリカ諸国の予算案も発表になった。ケニア、ウガンダ、ルワンダである(ブルンジに関しては報道がなかったが、選挙戦の真っ最中のはずだ)。ケニアは予算案は9968億ケニアシリングで、GDP成長率2.6%。ウガンダは7兆5億ウガンダシリングで、GDP成長率は5.8%とされる。東アフリカ諸国の財政規模を比べてみるのは難しいが、単純に予算案のUS$換算をしてみると、ケニアは、128億ドル、ウガンダは 32億ドル、タンザニアは83億ドル、ルワンダは13億ドルとなる。ケニアと他の3カ国の合計がほぼ一緒という規模だ。

 ☆参考:National Websaite of the United Republic of Tanzania "Taarifa ya Hali ya Uchumi wa Taifa kwa Mwaka 2009"

(2010年7月1日)

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