Harufu ya Karafuu 第5回 テレビの裏側~コーディネーター編~
森田さやか
新婚さんと撮影スタッフさんと私。奥様は撮影終了後、疲れきっていた。
Pole sana. ありがとう。 みなさんはテレビの裏側というものに興味はないでしょうか。ADって実際どんな仕事をするの?カメラは何台使っているの?この番組はどうやって作っているの?というような興味。私は日本にいる間、一日中ずーっとテレビを見ていても嫌にならないぐらいテレビが好きだったのでテレビの表側はもちろん、裏側にも非常に興味があった。そんな中今年の1月、テレビ業界の裏側を垣間見れる機会を与えられた。1月だけでテレビ撮影2本のコーディネートを任されたのだ。
1本目はもう日本で放送されてしまったので内容を話してしまっていいだろうか…。新婚さんの奥様にその人が暮している国の朝ご飯を作ってもらうというコーナーや、ある国のイケメン(男前)を紹介するコーナーがある番組。日本でこの番組を見たことがあった私は「こういう外国の新婚さんとかってスタッフさんが現地に到着してから探すのかなぁ」と思っていたけれど、ところがどっこい探すのはコーディネーター、つまり私の仕事だった!新婚さんもイケメンも探すのが大変。やっと見つけても、今度は番組の趣旨を説明するのに苦労する。番組としては、外国の料理を紹介しつつかわいらしい奥様を紹介…という具合なのだけれど、その意味をなかなかわかってもらえない。「私が料理をして、それで?」と言われてしまう。それもそうだな、と思う。なんとかわかってもらうために「タンザニアの食文化を日本人にわかってもらいたいというスタッフの希望なんだよ」「今まで世界中の食事を紹介してきて、今度はタンザニアの番なんだよ」と一生懸命説明し、やっと納得してもらえたかな?という感じ。イケメンくんにいたっては、「キミ、男前に選ばれたよ!日本のテレビに映るよ!やったやーん!」で終わり。
一応の下準備を終え、撮影に来るスタッフの方々を待つのだが、この仕事を任されていろいろな準備を始めてから本当に本当に怖かった。今回が初めて一から任されたコーディネートの仕事で、私が準備した段取りでいいだろうか、スタッフさん達が来たらどうなるだろうか、文句を言われないだろうか、撮影の収穫がなくタンザニアまで撮りに来た意味がなくなってしまったらどうしよう……と、本当に毎日のように夢に見ていた。今思い出すと自分でも信じられないくらいプレッシャーを感じていたのかもしれない。
キガンボーニでバオバブを撮影しているスタッフさん達。 実際にスタッフさんとお会いして撮影や取材が始まると、ずっと感じていた恐怖がだんだんとなくなっていくのがわかった。なんと言っても今回はスタッフさんに恵まれていた!とても優しく、私にまで気を使ってくれるような本当に素敵な方々だった。一緒に仕事をする人がいい人であるだけで、大変な仕事も感じ方が違う。良い映像を撮って帰ってもらうために、こちらもできる限りのことをしなくては!という気になる。
しかし良い映像を撮るためにはやはり苦労、努力が伴ってくる。コーディネーターがテレビの撮影でぶち当たる壁、それは高い位置からの撮影(と少ない経験から私は勝手に思っています)。昨年短期間だけお手伝いをさせてもらった撮影で苦労したので、今回もまさかと思ってはいましたがやっぱり出ました、高い位置から町全体を見下ろす撮影の要望が。なんだか特別な許可が要りそうな高層ビルをディレクターさんが見上げている………。「あの上からダルエスサラームの町を撮りたいと言われてはまずい」と思い、なんとなくの会話でこちらが準備できそうなビルでの撮影へ話を持っていく。今回は、スタッフの方々が宿泊されていたホテルの屋上を開けてもらいピンチを回避。ホテルの従業員と仲良くなっていたことが功を奏したようだ。
ちなみに高い位置からの撮影要望は、1月にコーディネートした別の番組撮影でも出た。やはり取材している町の全体像は必須なよう。皆さんもテレビ撮影のコーディネートをする機会がありましたら、あらかじめ交渉が成立しそうな高い建物を探しておくことをお勧めします。大事です。
ホテルの屋上から見たダルエスサラーム。こんな機会は
めったにないだろうと、 撮影にまぎれて私もシャッターを切った。撮影を進めるなか、一番困ってしまうのは人びとの撮影拒否。ダルエスサラームの人びとは、観光客などに普段から勝手に写真やビデオを撮られているのだろう。撮られることに敏感になっている印象を受けた。撮るなら撮影料金を払ってくれという人もいる。恥ずかしがって絶対に撮らせてくれない人もいた。全員に断られては撮影にならないので、撮るならお金ちょうだいよね、というお母さんには「こんにちは。元気ですか?仕事の調子はどう?働いているお母さんが素敵だから是非撮らせてよ」などと言いながら撮影させてもらう。お母さんも最後にはしょうがないわね、という感じで笑顔で応えてくれる。撮影している横から野次を飛ばしてくる人にも、さりげなく日常会話を話して気をまぎらわしてもらう。こんな風に受け入れてもらえると、私も一生懸命しゃべった甲斐があったもんだとすごく嬉しくなる。もちろんお金も何も要求せず、大笑いしながら快く撮影させてくれたおばさんやおじいさん、子供たちもいた。
決してこちらがイライラすることなく、撮影が順調に進むことを考えて周りへの対応をするのもコーディネーターの仕事なんだな、撮影許可を取ったりインタビューの通訳をするだけではないのだな、と何度も何度も考えた。それは決して明るみに出ることはない地味な仕事かもしれないが、タンザニアで良い映像を撮ってもらえるのならばそれでいい、この仕事をすることによってより多くの人にタンザニアに興味を持ってもらえたらいい、と強く感じたやりがいのある仕事だった。
(2008年2月15日)
☆Harufu ya Karafuu(クローブの香り)は、とてもいい香りで多くのタンザニア人は好きだとか…。 森田さやかがタンザニアの良い部分、ステキな部分を書いていきます。