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Kusikia si kuona No.33 Vanilla-バニラ

相澤 俊昭(あいざわ としあき)


 今年から友人のSさんがバニラ栽培のプロジェクトに関わっているので、モロゴロにあるバニラ畑を見学に行って来た。バニラはアイスクリーム、お菓子などの香り付けに幅広く利用されているので、私たちの食生活にとても馴染み深い香辛料ではないだろうか。

 バニラは平均気温が20℃から30℃で、年降水量が2,000mmから3,000mmの温暖で湿潤な気候で育つラン科のつる性植物になるそうだ。長さ15から30cmぐらいの見た目、インゲン豆にそっくりな実をつける。この実が加工され、バニラ・ビーンズと呼ばれる製品になる。主な産地はマダガスカル島、レ・ユニオン島、コモロ諸島、インドネシア、タヒチ、メキシコなどで、その中でも特にマダガスカル島、レ・ユニオン島、コモロ諸島で収穫されたバニラ・ビーンズはブルボン産バニラビーンズと呼ばれる最高級品で、世界シェアのほとんど占めるそうだ。主要産地のマダガスカル、インドネシアなどと比べると、東アフリカの生産量は1割にも満たないそうだ。

<バニラの実>

 タンザニアではザンジバル島とペンバ島、カゲラ州の北部、そしてモロゴロのウルグル山域で栽培されている。ダルエスサラームから内陸へ200kmほどにあるウルグル山はインド洋から吹きつける東風(季節風)を受けて、東側斜面では年降水量が2,500mmから3,000mmになり、乾季でも時々、雨が降るのでバニラ栽培に適している土地だそうだ。

 まず、Sさんと一緒のプロジェクトで働いているジャコブさんの家のバニラ畑を案内してもらった。ジャコブさんの自宅はウルグル山麓にあり、庭の周りのバナナやメイズなどを育てているそうだ。初めて聞いた時は、自宅の庭の畑でバニラが育てられているのかとちょっと驚いたが、バニラはコーヒーと同じで直射日光を嫌う植物で、バナナやマンゴーなどの日陰になる樹高の異なる作物や木が植わっている畑が栽培に適しているとのこと。なんでも日光がバニラの葉を痛めてしまうのだそうだ。

<ジャコブさんの庭の畑の様子>

<バニラと一緒に植えてあったコーヒーの木>

 自宅のバニラ畑を見せてもらった後に、山のさらに上にあるというバニラ畑に連れて行ってもらった。ここの畑では、バニラはもちろんのこと、コショウ、カルダモン、コーヒー、バナナ、マンゴー、ジャックフルーツなどいろいろな作物が一緒に植えられていて、まるでザンジバルのスパイスツアーの農園を訪れているような気分になった。山間の狭い土地を利用して、他の作物と競合することなく、非常にいろいろな作物や木が植えてあるのに驚いた。

<カルダモンの実>
<ジャックフルーツの実>

 バニラは雨季に苗を植え付けし、開花するのが9-11月頃。そして花が開いた時期を見計らって、人口受粉をするそうだ。そして8-9か月後にバニラの実が熟し、5-7月頃に収穫をするそうだ。収穫したばかりの鞘状のバニラの実は香りがなく、成熟したものを収穫し、お湯に浸す加熱処理をして、キュアリング(乾燥と発酵の繰り返し)という作業を行うことにより、バニラ独特の香り(バニリン)が引き出されるそうだ。このキュアリングと呼ばれる作業を4週間ほど繰り返すそうだ。そして出来上がったものはバニラ・ビーンズと呼ばれ製品になり、出荷されるとのこと。ジャコブさんも出来あがったバニラ・ビーンズをモロゴロの市場で売りに出しているそうだ。

<加工中のバニラの実>

 ジャコブさんによると、バニラは買い取り価格が安定しており、家計の現金収入の助けになっているとのこと。また、バニラがダルエスサラームなど近隣の都市から仲買人を引き付け、同時に他の作物(香辛料やバナナやマンゴーなど)の取引が進むという相乗効果も見られるとのこと。うまくいけばバニラが、世帯収入の向上、また地域の活性にも繋がる可能性を秘めた作物だということが分かって面白かった。


(2017年6月15日)

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