Pole Pole No.11 エッセンシャルオイルができるまで
後藤由紀子(ごとう ゆきこ)
リラックス、美肌、健康のためにアロマテラピーを日常に取り入れている方もいらっしゃると思う。その際使用されるエッセンシャルオイル(植物の花、葉、樹皮等から抽出した精油)を作っている場所を訪れたので紹介したい。
<クローブの枝と葉>
今回訪れたのはスパイス・アイランドとして知られるウングジャ島の北に位置するペンバ島。ペンバ島ではザンジバルの経済を支えたクローブ(スワヒリ語ではカラフー)の8割が生産されていた。クローブの価格の低下、生産の低迷はあるもののペンバは世界有数のクローブの生産地として知られている。
<クローブの枝と葉を袋に詰めているところ>
ここペンバにはザンジバル国営のエッセンシャルオイルを生産する工場がチャケチャケの街中から車で10分程度の場所にある。敷地内は緑が多く気持ちが良い。ここは1982年に建設が始まり、84年から稼動している。クローブのオイルをメインに作っている。クローブは香辛料として肉料理に使われるが、クローブの精油には殺菌、防腐作用があり食品用に使用される他、弱い麻酔、鎮痛作用もあり、鎮痛剤として使われることもある。この工場ではクローブの他にレモングラスやシトロネラ等のエッセンシャルオイルも生産している。
<クローブのエッセンシャルオイルが入ったドラム缶>
まず案内された建物では10名ほどがせっせと袋に何かを詰めていた。何をしているのかを尋ねるとクローブの葉と枝を袋に詰めているところだという。この袋を満杯にすると40~50Kg程度になるとのこと。クローブの実は前述のように香辛料として使われ、ここで袋に詰められるのは葉と枝のみである。建物の奥には赤いドラム缶がいくつも並べられていた。中身を尋ねるとクローブのエッセンシャルオイルが入っており、ヨーロッパ、インド、ロシア等に輸出するとのことだった。
<エッセンシャルオイルを抽出するタンク>
次に通された場所は試験管や冷蔵庫があるラボラトリーだ。ここでは品質管理をする他、機能や効能のチェックをしているとのことだ。そこから更に奥に入っていくとエッセンシャルオイルが抽出される部屋があり、その部屋には大きなタンクがいくつも並んでいる。エッセンシャルオイルを植物から抽出する方法がいくつかあるが多く用いられるのは「水蒸気蒸留法」とのことだ。 ここでもその「水蒸気蒸留法」でエッセンシャルオイルを抽出している。植物原料を入れる蒸留釜を満タンにすると700Kgのクローブの葉と枝が入る。そこに水蒸気を送り込むと植物中にある精油成分が遊離、気化し、水蒸気と一緒に上昇する。次に冷却槽で冷やされると液体に戻る。この液体は水とエッセンシャルオイルの二層に分かれて溜まり、ここから水と分離してオイルを取り出すとエッシェンシャルオイルができる。700Kgのクローブから取れるオイルはわずか40ℓ程とのことだ。
<冷却された後に水とエッセンシャルオイルが溜まるところ工場で作られたエッセンシャルオイル>
残念ながら私が訪ねたときはメンテナンス期間にあたり稼動しているところは見ることができなった。1年の中で稼動をしているのは8ヶ月。それ以外の時期は修理や点検の時期となるとのことだった。年間どれくらいのエッセンシャルオイルができるのかを尋ねると、年によって生産できる量は異なるが最低でもドラム缶200缶は生産していると言っていた。
<工場で作られたエッセンシャルオイル>
普段加工された状態で手に入るものがつくられる機会を見ることはなかなかないが、原料の段階からどのような過程を経て、そして人が関わり製品・商品になっているのかを知るのはとても興味深かった。機会があれば次回は抽出されているところを見てみたいと思った。
(2013年12月17日)
*「PolePole」とはスワヒリ語で「ゆっくり」と言う意味です。タンザニアのゆったりした雰囲気をこのページで伝えられたらと思います。