白川
Pole Pole No.8 緑を守ること、増やすこと – キリマンジャロ山の植林地を訪れて
後藤由紀子(ごとう ゆきこ) 3月上旬にキリマンジャロ山の東南山麓にあるテマ村に日本から視察にいらした3名の方と一緒に訪問しました。テマ村はモシの街から車で1時間半程、標高約1,700mの場所にあります。このテマ村ではTEACA(Tanzania Environmental Action Association)というタンザニアのNGOとタンザニア・ポレポレクラブという日本のNGOと地域の人々が協力をして森林回復のための植林活動を行っています。TEACAは1989年からこの地で植林活動を始めています。
TEACAの事務所の裏には森林と苗畑があります。その木々はそこに昔からあったものではなく、苗木が成長して形成した森林です。スタッフの方から「ここは植林が完了した場所」と聞くまでは小さな苗木から育ったとは思えない程の立派な木々です。その前にある苗木と比べて見ると、小さな苗木がこんなに大きな木になるものなのかと驚くと共にとても感動しました。なぜなら植えた苗木を立派な木々にするのは簡単なことではないからです。苗木は植えればすくすくと自然と順調に育つわけではなく、雑草や他の植物に負けてしまうこと、その地に上手く根付かないこと、天候によっては枯れてしまうこともあります。
今回2カ所の植林地を訪れましたが、一カ所目のルワ村は植えた苗木が外から持ち込まれたブラックワットルに負けてしまうため定期的なブラックワットルの除去が必要となっています。私達が訪れたのは大雨季前になるのですが、この大雨季前には次期の植林に向けて村の人々が定期的に伐採の作業を交代で行っているそうです。今回訪問した際もその場に遭遇することができ、住民の人々が協力して緑を増やそうとしている意志を感じました。
もう1カ所の植林地のロレ・マレラ村では最初に植えた苗木が根付かず、植える苗木を変え、現在は最終手段として松の木が植林されています。経過は順調なようですが、この植林地もまた上述のルワ村の植林地も現在KINAPAの管轄下にあり、国立公園内となるため苗木が育っても住民の人々が手入れをすることができなくなっています。
キリマンジャロ山の森林は減少の一途を辿っているため(TEACAの活動地では森林量は増加をしています)、管理をする側は人を排除しキリマンジャロの緑を守ろうと考えているようです。しかし実際は人を排除する=人の利用がなくなる=緑の減少をくいとめるという簡単な方式は成り立ちません。利用を禁止してもそこに住む人々の森林への需要は変わらずあり、人々は違法とわかっていても森林に侵入せざるを得ない状況があります。
ポレポレクラブの藤沢さんは「キリマンジャロが守られていたのは独立以前の人々が管理、利用していた時。森、水、雨の大切さを人々わかっている。信頼して任せてもらえればしっかり管理ができる」と仰っており、その言葉がとても印象に残っています。自然を守ろうとするときに「人を排除する」という方法が取られることは多いのではないでしょうか。しかし今回の藤沢さんのお話を聞き、ただ人を排除すれば解決するわけではないことをよく理解することができました。
緑を守ること、増やすことは決して簡単なことではなく、人々の地道な努力、問題があっても諦めることなく続けていく強い意志、それがなければできないことだと思います。今回TEACAの植林地を訪問させていただき、地にしっかりと根を下ろし、地道に活動をしていくこと、少しずつでも継続して活動をすることの大切さを実感しました。これはこうしたNGOの活動だけではなく、普段の私達の生活にも言えることではないかなと思います。問題があっても諦めずに少しずつでも前に進もうと思う、そんな強い意志と実行力を持ちたいなと今回の訪問を通じて思いました。
最後になりますが、今回案内をしてくださったTEACAのスタッフの方、ポレポレクラブの藤沢さん、どうもありがとうございました。
(2013年6月15日)
*「PolePole」とはスワヒリ語で「ゆっくり」と言う意味です。タンザニアのゆったりした雰囲気をこのページで伝えられたらと思います。