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  • 執筆者の写真白川

Shwari No.11 大雨季サファリ③ ~セレンゲティ~

石原裕介(いしはら ゆうすけ)

ンゴロンゴロから車で2時間、セレンゲティ国立公園に到着する。マサイ語で「果てしな い平原」を意味するこの地には、見渡す限りに広がる大サバンナの中に、数多くの野生動物が生息している。その数と種類にも圧倒されるが、季節によって動物達の見せる表情も変わってくるから面白い。自然の奥深さを味わいたければ、セレンゲティに足を運んでみよう。

セレンゲティの主役と言えば、何と言ってもヌーだ。その数は100万頭とも200万頭とも言われる。ヌーの群れはマイグレーションと呼ばれ、タンザニアとケニアの間を、食料である草を求めて移動し続ける。1月から3月にかけてセレンゲティ南部に留まっていたマイグレーションは、4月頃ゆっくりと北上を始め、セレンゲティ西部、北部と通過し、9月頃にはケニアのマサイマラへと抜けていく。そして、11月頃になると、マサイマラから再び移動を始め、セレンゲティ東部を通り、1月、南部へと戻ってくるのである。一年間で数百キロの大移動だ。この移動に引き寄せられるかのように多くの肉食獣達も集まってくる。

私の行った5月は、ちょうどマイグレーションがセレンゲティの中心部セロネラへとやってくる時期だ。早朝ンゴロンゴロを出発し、2時間程度走ると、セレンゲティのゲートに到着する、シマウマやキリンなどの動物もこの辺りからちらほらと見えてくる。ンゴロンゴロと違って、少しシマウマも緊張した様子で、どの群れでも2頭ずつがペアとなって、首をばってんに重ねるようにして向き合って立っている。このように2頭が協力することによって360度の視界を確保し、外敵から身を守っているそうだ。

セレンゲティのゲートから、さらに2時間くらい走ると、セロネラに到着する。セロネラに近づくにしたがって、あちこちでヌーが群れを成しているのが見られるようになってくる。止まって草を食んでいるグループもいれば、どこかへ一直線になって走っていくグループもある。一度、目の前をヌーの群れが横切ったのだが、5分経っても、15分経っても、30分経ってもその列は消えずに、まるで川の流れのように延々とヌーが走り抜けていくのだった。

ヌーに限らず、この時期、この辺りには他の草食動物も数多くいるため、肉食獣にとっては、食事に困らないのんびりした季節となる。私達はセレンゲティでの2日目を終日のゲームドライブにあてたが、この日の収穫は木登りライオンとチーターを間近で見られたことだった。お腹は減っていないのだろう、

目の前を移動するヌーの大群をボケーっと見つめながら、のんびりお昼寝をしている木登りライオンの姿が非常に印象的だった。また、チーターと言えば、あり塚の上に立って獲物をさがしていたり、ハンティングに失敗してゼーゼーと荒い呼吸をしているイメージが強いが、こちらもまた、のんびりと昼寝をしたりじゃれあったりして遊んでいた。これらもまた、この時期ならではの光景なのかもしれない。

最終日はヒッポプール呼ばれる場所に、カバを見に行った。大雨季を明けたばかりで川に水が大量にあるからだろう、カバものんびりしているようだった。乾季になると、少ない水を求めて、ひとつの水場に大量のカバが押し寄せると聞いた。これだけでもすごい数で、迫力満点だったが、ガイドに言わせれば、まだまだ数は少なく、乾季にはこの数倍の数のカバが集まってくるそうだ。

もちろん、ふと地面に目をやると、ヌーやシマウマの死骸が転がっていたり、ハゲワシがそれらをつまんでいるという光景も目にすることになる。天からもたらされた恵みの雨は、草を育み、それがヌーやシマウマを呼び、それを肉食獣が捕食する。セレンゲティで起こっているこれら壮大な命の連鎖。これはもちろん地球本来の姿であり、大昔から繰り広げられてきた当たり前の世界なのだろう。だが、人間の行動次第では簡単に壊れてしまうものだということも、私たちは忘れてはならない。

(2010年10月15日)

*「Shwari」  私の大好きなこの言葉は、スワヒリ語で「平穏」を意味し、タンザニアでは挨拶でも用いられるほど頻繁に使われます。このコーナーでは、そんな穏やかでのんびりしたタンザニアの様子を、みなさんにお届けしていきたいと思います

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