Shwari No.12 キャンピングサファリ in Mikumi N.P
石原裕介(いしはら ゆうすけ)
野生動物を見に行くサファリの宿泊方法には大きく分けて2通りある。一つはロッジやテントキャンプなどに宿泊するタイプで、一般的なのがこれ。そしてもうひとつが、自分達でテントを担いでいくキャンピングサファリだ。このキャンピングサファリ、普通はコックを一緒に連れて行くという大名サファリになるのだが、それじゃあ普通のサファリとそんなに変わらない。
より自然を感じたい、そしてサファリを堪能したいという方にお勧めなのは、料理からなにから、すべて自分達でやってみようというスタイルのキャンピングサファリだ。先日、ダルエスサラームから車で4時間程度のところにある、ミクミ国立公園へ友人たちを誘って一泊二日のキャンピングサファリに行ってきたので、今回はその模様を報告したい。
出発日早朝、テントや寝袋などのキャンプ用品をサファリカーに積み込み、眠い目をこすりながらも、意気揚々とサファリへ出発する。そして、ダルエスから車で3時間程行ったところにあるモロゴロという町で昼食をとると、ミクミ国立公園まではもう間もなくだ。モロゴロから1時間程度走りミクミが近くなってくると、幹線道路の脇にちらほらと動物達が見えてくる。バッファローやインパラ、キリンなど、特にこちらの様子を気にする訳でもなく、のんびりとしている。
ミクミに到着すると、普通ならすぐに「動物を見に行こう!」となるが、それはしばしお預けだ。まずはキャンプ場へ移動し、キャンプの設営をする。家族連れならお父さんが張り切るところだが、今回はそうは行かない。若者が協力して、不慣れな手つきでテントを組み上げる。そして、風で飛ばされないようにしっかりとテントが固定できれば、待ちに待ったサファリの時間だ。サファリカーの天窓を開け、動物を追いかける。
ミクミはタンザニアの国立公園の中では、比較的規模の小さな公園なので、見られる動物の種類もおのずと限られてくる。それでも、前述のバッファロー、インパラ、キリンに加え、ゾウやカバを容易に見ることができる。特に今回は、ライオンのオスをとても近い距離で見ることができた。何十分その場にいたか定かでないが、太陽の色が黄色から濃いオレンジ色へと変わっていくまで、サファリカーから、ずっとライオンを眺めていた。
しかし、そうのんびりと動物を見ている訳にはいかないのがキャンピングサファリだ。夕食の準備があるので、日が暮れるまでにキャンプ場に戻らなければいけない。サファリカーを少し早めに走らせ、キャンプ場に到着するなり夕食の準備に取り掛かる。男性陣は薪を集めて焚火の準備をし、女性陣は料理を始める。周囲に電気はまったくないので、日が完全に沈むと、すぐに頭上に星空が広がる。そうなったら、焚火と懐中電灯の光を頼りに料理を続けなければならない。
今回のメニューは、キャンプの定番のカレーだったが、大自然を感じながら食べるカレーはまた格別だ。それが自分達で協力して作ったものだからなおさらだ。食後は、ビールを片手に、皆で焚火を囲ってのんびりした時間を過ごす。時折聞こえる動物の鳴き声が、雰囲気をいっそう沸き立て、子どもの頃に見た映画「スタンドバイミー」のような世界感を味わえる。突然、後方の茂みから「がさがさ」という音が聞こえてきたと思ったら、インパラが飛び出してきた時には正直驚いたが、それもまたいい。そして、各々テントに戻り、動物の鳴き声を聞きながら、眠りにつく。
翌朝は日の出と共に動き出す。まずはパンなどの軽食を取って腹ごしらえをし、テントを片付け、2回目のサファリに出発する。そして、お昼頃、ミクミ国立公園を後にする。国立公園でのキャンピングというと、肉食動物もいて危ないのではないかと思う人もいるが、そう心配することもないだろう。基本的に動物はテントに近づいてこないし、火を焚いていれば恐れることはないはずだ。また、心配だったらレンジャーを雇うこともできる。
(2011年1月15日)
*「Shwari」 私の大好きなこの言葉は、スワヒリ語で「平穏」を意味し、タンザニアでは挨拶でも用いられるほど頻繁に使われます。このコーナーでは、そんな穏やかでのんびりしたタンザニアの様子を、みなさんにお届けしていきたいと思います