Shwari No.15 タンザニアのカルチュラルツアー ~ンギレシ村(アルーシャ州)~
石原裕介(いしはら ゆうすけ)
現在、タンザニアでは、タンザニア観光局、天然資源観光省、そしてオランダの援助機関であるSNVのジョイント事業であるTanzania Cultural Tourism Programme というプロジェクトが行われている。これは、受け入れ地の収入向上とタンザニアの観光の多様化を目的としたもので、タンザニア全土で28の地域が登録されている。先日、その内の一つ、ンギレシ村を訪問してきたので、今回はその模様をお伝えしたい。
ンギレシ村はアルーシャ郊外、メルー山の山麓にある、ワアルーシャの人々の小さな村だ。村人の多くが石やコンクリート、あるいは木で造った住居に住むが、一部の人はボマと呼ばれる伝統的な住居に住む。近代的な村の中に、伝統的な生活を垣間見ることができるのだ。
続いて、村歩きに出発する。ガイドは村の様子や村人の生活、そして彼らの開発に対する取り組みについて丁寧に解説してくれる。この村歩きでは、伝統的な家屋を見学したり、ローカルなバーに入って休憩したりと、村を色々な角度から見ることができた。私が興味深く感じたのは、この村で取り組まれている乳牛のプロジェクトだった。乳牛を一頭育て、大人になり子牛が生まれると最初に生まれた牝を隣人に譲る。譲られた人はその牛を育て、子牛が生まれるとやはり最初に生まれた牝を隣人に譲る。こうして少しずつ牛を協力して増やしているそうだ。
また、小学校と中学校も見学した。この村で行われているカルチュラルツーリズムの収益の一部は、これら学校への支援にも使われていて、教室の建設が少しずつではあるが、進んでいるということだった。授業を見学させてもらったが、どちらも学生達が熱心に勉強していた。
夕方家に着くと、ホームステイ先のママが夕食の準備に取り掛かっていた。横では子ども達が一生懸命お手伝いをしている。この村には山の上部の水源からパイプラインが通っているので、一応水道はある。ところがその水道も一般家庭まで伸びているわけではないので、やはり水場まで水を汲みにいかなければならない。こちらはお客さんとはいえ、子ども達が頭にバケツを載せて働いているのを見ているだけでは分が悪い。私は子ども達と一緒に水汲みに行くことにした。水汲みの場所はそう遠くはないが、なまった体にはなかなかの重労働だ。疲れたが、村人の生活の一端を感じられたようで、良い体験となったと思う。
この村では、他にも村にある神聖な巨木の見学、呪術医の訪問、コーヒーのピッキングや滝へのトレッキングなど、様々なアクティビティを観光客に提供している。まだまだガイド一人の力量に頼っていて、村人総出で観光を村の発展につなげていこうというところまでには至っていないようだが、村長を筆頭に観光を生かしていこうという意欲を非常に強く感じた。
最初に述べたように、現在は28の地域が登録されている。そのそれぞれで、おそらくその土地ならではの、オリジナリティにあふれる観光への取り組みが行われているのだろう。そういった村々を歩いて周ってみるのも、タンザニアのいろいろな側面が知れて面白いのかもしれない。
(2011年7月15日)
*「Shwari」 私の大好きなこの言葉は、スワヒリ語で「平穏」を意味し、タンザニアでは挨拶でも用いられるほど頻繁に使われます。このコーナーでは、そんな穏やかでのんびりしたタンザニアの様子を、みなさんにお届けしていきたいと思います