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Shwari No.6 TANZAN鉄道で行くキトゥロ国立公園の旅

石原裕介(いしはら ゆうすけ)

 タンザニアで最も新しい国立公園であるキトゥロ国立公園は、タンザニア南部の高原(標高2500m~3000m)に広がる小さな国立公園だ。12月~2月は花のシーズンで、あたり一面に花が咲き乱れ、その素晴らしい景色から「神の庭」と評されている。ダルエスサラームからの行き方は以下の3つ。

不定期のフライトでムベヤまで飛び、そこから車で200km。車で直行、960km。TANZAN鉄道でムベヤまでのんびり1泊2日の旅、ムベヤから車に乗り換え。 多少時間がある人にしか取れない選択だが、お勧めは断然(3)だ。私も10月末、このTANZAN鉄道→ムベヤ→キトゥロというルートを旅行してきたので、その模様をご紹介したい。

 この日、TANZAN鉄道のダルエスサラーム出発は15:50。普段は人っ子1人いない駅も、この日ばかりは乗客で一杯になる。列車の準備が出来ると、1等席の乗客から順にホームに案内され、列車に乗り込み、出発の合図を待つ。1等は1つの部屋に2段ベッドが2つの寝台列車で、私はイギリス人旅行者1人とタンザニア人2人と同室だった。

 そして、列車は警笛を合図にガタンゴトンと走り始める。最初はみんな相手を様子見しているようで、各々、車窓から外の景色の写真を撮る人もいれば、新聞を読んでいる人もいた。ところが、列車がダルエスサラームを出て田舎道を走り、太陽が赤く色づいてくると、少しずつ部屋の中での会話が弾んでくる。タンザニア人がビールを買ってきて、みんなで飲み始めたら最期、列車だけではない、会話は進むし、ビールも進む。タンザニアの話、イギリスの話、日本の話、お互いに自分の身の上話を聞かせる。また列車は時折、駅に停車するが、その際待っているのは乗り降りする乗客だけではない。駅近くに住んでいるのであろう行商までもがやってきて、窓越しに商品を売っているのだ。いろいろなものがあったが、私達はチキンとゆで卵を買って酒のつまみにした。見ず知らずの人達が会話に盛り上がり、ビール片手に旨そうなものがあれば窓から買う。外はタンザニアの田舎道。夕日を背に子供達が手を振っている。こんな楽しいひと時はそうは味わえない。列車の旅ならではのひとときだろう。

 夜も更けてくると、みんなそれぞれのベッドに戻り、毛布にくるまって眠る。列車はそのまま暗闇を走り続けるが、深夜何時ごろだろうか、私の部屋のタンザニア人達も、「よい旅を」という言葉だけを残して、1人2人と降りていった。明朝、イギリス人がどこかの駅で降りると、部屋は私だけになった。それから先は、ムベヤまでのんびりと外を見ながら、景色を楽しむ。ムベヤへの到着は13時半頃だった。

 ムベヤでキトゥロ国立公園の職員の方と待ち合わせをし、公園の玄関口となるマタンバ村まで車で行った。村では、現地の女性グループが建てたゲストハウスに泊まった。その女性グループは女性の収入向上のための活動や村の孤児支援等の活動を行なっているそうだ。とても家庭的で、食事もタンザニア料理が中心で、頼めば一緒に作らせてくれる。村では気が向いたときに散歩をし、タンザニアの農村のゆったりした時間の流れに身を置くことができる。星もとても綺麗だった。

 翌日キトゥロ国立公園に向かった。そこでは、普段ダルエスサラームで生活していると、本当にここが同じタンザニアかと目を疑うような景色を目の当たりにする。いくつもの丘が緩急のある景色を作りだし、その手前には緑豊かな平野が広がる。花のシーズンにはちょっと早かったが、それでも、車から降りて野原を歩いてみると、生まれて初めて見るようなカラフルな花々が咲いていた。時折、目の前を野鳥が飛んでいく。公園内には小さな滝や川もあり、その辺りに腰を下ろし、村のママさん手作りのお弁当を食べる。

 確かにタンザニアにはセレンゲティやンゴロンゴロなど、世界に誇るナショナルパークや動物保護区がいくつもある。しかし、ここキトゥロには、そういった場所では味わうことの出来ない何かを感じる。まるで子供の頃の自分に戻るような、なにか懐かしい感じだ。車の中から動物を見ることだけがタンザニアの国立公園のすべてではない。もしあなたが、そういったサファリではない何か別のものを感じたいと思ったら…。もしタンザニア人と一期一会の出会いをし、彼らの暮らしを見てみたいと思うのなら…。TANZAN鉄道に乗って、キトゥロの高原で、そしてマタンバの村でのんびりするといいだろう。そこには、私たちが遠い昔に忘れてしまった、大切な何かがあるはずだ。

TAZARA料金、ダルエスサラームからムベヤまで:1等、Tsh32,400/片道 ゲストハウスの宿泊費 Tsh10,000/1室 朝食つき(ダブルベッド1つ)夕食Tsh6,000(ハウス内での飲酒・喫煙は不可となっています)キトゥロ国立公園入園料  大人$20 子ども$5(15歳まで)  

(2009年11月15日)

*「Shwari」  私の大好きなこの言葉は、スワヒリ語で「平穏」を意味し、タンザニアでは挨拶でも用いられるほど頻繁に使われます。このコーナーでは、そんな穏やかでのんびりしたタンザニアの様子を、みなさんにお届けしていきたいと思います

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