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  • 執筆者の写真白川

Upepo wa Tanzania 第10回 Supa Marketi(スーパーマーケット)

池田智穂(いけだ ちほ)


 日本ではどこへ行ってもコンビニエンスストアはあたり前のものになっている。タンザニアでは、普通のお店や比較的遅くまでやっているスーパーマーケットでも、夜の9時か10時くらいには閉まってしまう。 

 しかし、JATAツアーズのオフィスの前のガソリンスタンドに併設されているスーパーはまさしく日本のコンビニと言っていいだろう。もちろん24時間営業で、大抵の物は揃っている。お菓子、ジュース、アイスクリーム、冷凍食品、洗剤、化粧品、新聞、雑誌、赤ちゃん用品まで、おまけにパンも店の裏で焼いていて、運良く焼きたてパンに出会える時もある。電話のバウチャー(プリペイドカード)や電気のカード(こちらは電気もほとんどがプリペイド式である)も売っているので、夜遅くに行っても結構お客さんがいる。最近は両替もしてくれる。本当にコンビニエンスストア(便利な店)だ。

 私は、この1年半ほどここに何度も通っているので、ほとんどの店員さんと仲良しになった。彼らも私が外国人でスワヒリ語を話すからか、何かと話しかけてくれるし親切にしてくれる。まだお店に出していない新商品のアイスクリームや焼きたてパンも何かと裏に呼んで味見させてくれたりする時もある。 

 先日も帰りが遅くなったので、買い物をして帰ろうと思って立ち寄ったところ、ちょうど彼らの夕食時で、おいしいKUKU(鶏肉)とチップスを裏でご馳走になった。売り物のジュースと、焼きたてパン付きである。

   そこで、新人の店員さん(といっても32歳くらいのおじさんだが)と1時間くらい立ち話しをした。彼は、私が聞いてもいないのにいきなり自分の今までの人生について語り出し、自分がこの店で働くまで何をしていたか、さらには家族のことまで事細かに語ってくれた。彼の話は、省略すると 「若い頃に現在の妻(その時17歳)が妊娠し、せっかく公立の中学校に合格して いたのに、退学させられてしまった。自分は働いていたので、彼女と結婚したかっ たのだけれど、彼女の父親がすごく怒ったので逃げてきてしまった。何年かたち、 いざ結婚のことを考えた時に、自分のせいで彼女の人生を狂わせてしまったこと に大きな責任感を感じ、その時いたガールフレンドは捨て、現在の妻にもう一度求婚した。 別れたガールフレンドはショックで自殺未遂までし、自分と同じ国にいて道でばっ たり会ったりすると嫌だからと言って、アラブに引っ越してしまった。現在は子 どもが3人いて、一番下は生まれてまだ1週間ですごくかわいい。」 というような話だった。知り合って1分ほどで、何で私にそこまで彼のプライベートなことを話すのか、いささか不思議に思ったが、おもしろかった。

 このように、日本のコンビニと違うところは、店員さんがあまり店員さんぽくないところである。店員さんとお客さんが対等な関係にあるような感じがする。日本では、営業時間にお客さんと長い間話しをしていたら店長に怒られそうだし、仕事にもならないだろう。またお客さんの前で物を食べたらお客さんに怒られそうだが、彼らは堂々と店のおかしやらパンやらを店内で食べていて、偶に「Karibu(どうぞ)」と勧めてくるときすらある。もちろんお客さんも誰も文句なんて言わない。裏でごはんを食べる時は(さすがにきちんとした食事は裏で食べているようだ)、店のパン焼き器で自分たち用に鳥を焼いたり、自由にしている。

 日本であればお客さんが買った品物をレジ打ちした後に、「やっぱりいらない」と言っても、心よく取り消してくれるが、こっちは普通に「めんどくさいなぁ」という文句を言ったり、「もうレジに打ったから取り消せない」とか普通に拒否をされる。何だかあまりに正直すぎておもしろい。また、日本ではどこのスーパーやお店に行っても、店員はずっと立ちっぱなしで接客しているが、こちらはほとんどレジを打つ店員は座って接客している。私も学生のころアルバイトをしていた頃は、毎日立ちっぱなしで足がとても疲れた経験があるので、座ってレジをするというのはうらやましい限りである。

 私がタンザニアを大好きな一番の理由は、やはり日本人の感覚を持っている自分が、日本人とは違う文化の中で育ってきたタンザニア人の感覚に触れ、刺激を受け、毎日飽きないことが大きいのかもしれない。

  (2006年12月)

  *Upepo wa Tanzania(タンザニアの風)では、あるスワヒリ語をキーワードに、池田智穂がタンザニアの日常について紹介していきます。

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