• 白川

Upepo wa Tanzania 第11回  Walemavu(障害を持つ人々)

池田智穂(いけだ ちほ)


  ダルエスサラームでは、路上で障害を持った人々がよく物乞いをしている光景を目にする。足が不自由な人、手が不自由な人、子どもが目の不自由な老人の手を引く姿…。朝の出勤のときから退社するまで、そんな人たちの姿を目にしない日はない。

📷 物乞いをする人々についてはいろいろな見方があると思う。お金をあげるのは癖になるからよくないとか、物乞いをしたお金で生活が成り立つようになると仕事をしなくなるとか…そういった意見が正しいか、正しくないかは別にして、タンザニアの人たちはそういう人たちに、ごく自然にお金を渡している。

 ある日、ちょっとした偶然で一人の車椅子に乗った青年と知り合いになった。運転マナーの悪い車が彼のことを跳ねそうになったのだ。私は目の前でその光景を見ていたのだが思わず「危ない!」と声に出してしまうほど危機一髪だった。彼の反射神経がよく、車をうまく避けたので引かれはしなかったが、彼もかなり車に対して大声で怒りをぶつけていた。でもその車は、「お前がこんなところにいるからだ」と言ってそのまま走り去って行った。  私はこの光景を見て、何てひどい車だと思って、それで彼と、「あの車運転マナーも態度も最悪だね。」という悪口で意気投合したのだった。彼は両足が動かない。その代わりに両腕を両足代わりに使っているのにふさわしく、とても力強い両腕を持っている。車椅子を動かすにはかなりの力がいるようだし、車椅子から降りると両手にサンダルを履いて、実に器用に歩いている。そして私が彼の最も好きなところはとっても陽気で明るいところである。  その彼が出会った何時間後かに帰宅途中の道で物乞いをしていた。初めは私と気付かず、窓越しにお腹が減っているんだというジェスチャーを辛そうな顔でしてきた。私はそれを見て、とてもおかしくなって「私だよ。覚えてる?」と言って窓を開けた。すると彼は、少しきまりが悪いような顔をした後に、昼間のように満面の笑みで「Mambo?(やあ)」と挨拶をしてくれた。本当にお腹が空いていたのかは分からないが、あの辛そうな顔もお金を得るための演技なのだとしたら、立派な演技派だ。

📷 日曜にスーパーに買い物に行った時は、義足を付けた青年に出会った。新しい義足を作るための、病院からの見積もり書を持って募金を募っていた。いろいろ話を聞いていると、数ヶ月前に、トラックに引かれたということだった。片足は義足からはみ出て、医者には切断して新しい義足を作るように進められているということだった。新しい義足を作るのはTsh150,000と(15,000円)だという。「仕事はしていないの?」と聞くと、「古着を買い付けて売っていたんだけど、今は手術と入院費にお金がかかって買い付けするお金がないし、足がこんなだから遠くまで歩けないんだ。」と言う。「じゃあ、新しく義足を作ったらまた仕事したい?」と聞いてみたると、彼は「もちろん!まだ若いし、パワーもあるんだから何でもできるよ!」と言った。何だか元気の出る言葉だなと思った。いろいろと話を聞かせてもらったお礼と、義足を作る少しの足しになればと思って、私も少し募金した。それでも、まだまだ足りないようだったが。

📷  私は物乞い(特にお金を乞う人)をする人には、ただではお金をあまりあげたくない。やはりきちんと理由が知りたい。もちろん理由なんてその場で作ってしまうことだってできるし、貧しいということが根底にはあるのは確かである。しかし、少し話しをすることで、彼らの考えや、境遇に触れ、お金をあげてもよいなと納得してあげたい。

 ただ思うこと。それは彼らにはああいう風に道端でお金を乞うことが仕事なのだ。この国では、なかなか定職の機会を得るのが難しい。仕事が少ない上に、障害があるということはさらに仕事の機会を少なくしている。炎天下の中、路上にずっと座って、ある時は、何キロも離れている場所まで移動して、物乞いをすることは、結構大変な肉体労働だ。しばらく、あの青年に会わなかったのだが、ある日タザラ鉄道の近くで彼が物乞いをしているのを見た。しばらく経ってまた、シティセンターで彼の姿を見かけた際に、「この前、タザラであなたを見かけたよ。あんな遠いところでも仕事してるの?」と聞くと、彼は「うん、あそこも僕の仕事場なんだ。」と言っていた。そういえば、車椅子に乗っている人たちは自転車くらいのスピードで、よく道路を駆け抜けている姿をよく目にする。

 最近あの明るい彼の姿を見かけないのだが、今はどこで仕事をしているのだろう。あのとても明るく元気な笑顔にまた会いたいなと思う。

  (2007年2月)

  *Upepo wa Tanzania(タンザニアの風)では、あるスワヒリ語をキーワードに、池田智穂がタンザニアの日常について紹介していきます。

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