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  • 執筆者の写真白川

Upepo wa Tanzania 第3回 Kijiji cha Buigiri 

池田智穂(いけだ ちほ)


 8月の半ば、夏のオルタナティブツアーの添乗で、名目上のタンザニアの首都、ドドマ州にあるブギリ村に行った。ここはタンザニアを代表する音楽家、故フクウェ・ザウォセ氏の生まれた村でもある。2日ほど前にザウォセ氏が育てたバガモヨの音楽グループCHIBITEの音楽を生で聴き、感動したこともあって、CHIBITEの原点があるブギリ村へ行けることをとても楽しみにしていた。途中バスが故障したこともあり、予定していた到着時間より大幅に遅れ、夕暮れ時に到着した。  

 ブギリのバススタンドから40分くらい歩いたところに私たち4人を泊めてくれる家族は住んでいた。村に近づくごとに、賑やかな音が聞こえてきた。その音は村に近づくにつれ大きくなり、村に入ると同時に私たちもその音の中に飲み込まれた。村人たちが私たちの到着予定時間だった3時ころからずっと、歓迎の音楽と踊りをしてくれていたのだという。村に着いた時はもう辺りは真っ暗で、村の様子はあまりよく見えず覚えていないが人々の歌声と音楽だけは鮮明に記憶に残っている。

 2日目の朝は、昨日の賑やかさが嘘のようにとても静まりかえっていた。昨晩は暗くて全く見えなかったが、家の前には大きな家畜の囲いがあって、その中には何頭もの牛や山羊、ロバがいた。ブギリ村の人々の生活の糧は、雨季に行なう農業と牧畜である。私たちが訪れた8月は乾季ということで、村人たちはミレットで作った地酒を、朝から飲み、お喋りや音楽に興じていた。この地酒、バケツ一杯なんとTsh1,500!一つのコップを皆で回し飲みするのが、ブギリ流ということだった。家の中には雨季の時に収穫した、ミレットやとうもろこしなどが袋いっぱいに積んであった。農業のできないこの時期は、この蓄えで生活をしていくのだ。  

   ブギリ村の朝は早い。4時頃から女性は水汲みに出かけていく。水汲み場までは歩いて20分ほど。帰りは水の入ったバケツを頭にのせてその道のりを帰ってくるのだから、かなりの重労働だ。村には水道がなく毎日女性たちが、村の水汲み場まで何度も往復している。私たちが来たことで村の女性たちの水汲みの仕事を増やしたようで何だか申し訳なかった。

3日目は村の小学校を訪れた、今回のツアーの目的は村の子どもたちにスワヒリ語で絵本の読み聞かせをすることであった。今回のツアーの参加者たちが日本にいるときから日本の絵本の翻訳作業を進めてくれていた。それを子どもたちの前で読んだ。子どもたちは初めて聞く日本のお話をとても真剣な眼差しで聞いてくれた。読み語りの後は子どもたちから日本についての質問などたくさんでた。ほかの村でもそうだが、ブギリ村の子どもたちはとても人なつっこかった。

その日のは村人たちが私たちの為に演奏会を催してくれるというので、夕方からある民家の庭に集まった。ゼゼという弦楽器、イリンバ(親指ピアノ)、ンゴマ(太鼓)を使ったゴゴの伝統的な音楽と歌を披露してくれた。普段は家事をしているママたちや、牧畜をしている男性たちも演奏会では弾き手、歌い手になる。ゴゴの人たちが音楽的才能に長けているというのも頷けた。当初、1時間ほどの予定だった演奏会も、段々と人々が集まり、最後は皆一緒になって踊り、夕暮れまで行なわれた。私たちも日本の歌を披露した。夕暮れに奏でる音楽は、ただただ広い大地に響き渡り、夕日と不思議な一体感を醸し出していた。

最終日は、日本の食べ物が食べたいという村のママたちのリクエストで、おむすびとキャベツの炒め物を作った。といっても私はお手伝いをしただけなのだが。炭でお米を炊く難しさを知った。結局できあがったのはかなり夜遅かったのだが、星空の下、女性や子どもたちとお喋りをしながらゆっくりと食事を作るという何とも贅沢な時間を過ごせた。できあがった食事も大人気で、時間をかけた甲斐があった。

ブギリ村の5日間は、始めから終わりまでいつも音楽で溢れていた。歩く時でさえ歌っていた。 子どもにンゴマを持たせると、どの子も上手に踊りながら演奏し、とても可愛かった。 普段、踊りなど苦手でしたことのない私でさえ、踊りたくなるそんな音楽と人々の雰囲気に溢れた村だった。 ゴゴの人たちは音楽的才能に長けているとは聞いていたが、私の想像をはるかに超えていた。 またこの村では、女性がよく働き、水汲み、家事、子育て、全て女性がこなしている姿が印象的だった。

ダルエスサラームへ帰る日の朝、村の人たちが、バススタンドまで見送りに来てくれた。 が、乗るはずのバスが私たちに気づかず通り過ぎてしまった。焦る私を尻目に村人たちはお喋りを始め、お客さんたちは、思い思いの時間を楽しんでいるようだった。そのうちまた、音楽を奏で始め、お客さんはじめ私もバスを待っている時間さえ楽しむことができた。結局その場で、3時間ほど次のバスが来るのを待っていたのだが、バスのいきなりの登場に私たちは村人にろくにさよならも言えずにバスに飛び乗った。考えてみるとあの炎天下の中、3時間も私たちに付き合ってくれ、楽しませてくれるなんてなかなかできることではない。

私の頼りない添乗に心よく付き合ってくださったお客様、始めから最後まで得意の音楽で私たちを 楽しませてくれたCHIBITEのメンバー、アンドレア、ダニー、そして何よりも私たちを暖かく迎えてくれ、最後まで音楽と時間の楽しみ方を教えてくれた素晴らしいブギリ村の皆さんにとても感謝している。

10月にCHIBITEのメンバー、タブ・ザウォセが訪日します。今回は、公演旅行ではないのですが、訪れる先々で飛び入りライブ(またはゲスト出演?)などがあるかと思います。詳しい内容は9月20日にアップします。タンザニアの音楽、踊りに興味のある方、またゴゴの音楽を聴いてみたい方、是非チェックしてください。

(2005年9月)

  *Upepo wa Tanzania(タンザニアの風)では、あるスワヒリ語をキーワードに、池田智穂がタンザニアの日常について紹介していきます。

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